ちゃいるど!!

□覚悟と私
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「ここだよ。」

『…随分厳重そうな金庫ですね。』


見上げる程大きな金庫は如何にも大事なものが入っています、と言っている感じだ。シャルさん曰わく、ウボォーさんなら壊せるかもしれないけど、中のものまで壊される恐れがあるから壊さないみたいだ。
金庫部屋の外では物騒な音と悲鳴が鳴り止まないのを聞きながら、ふと、これは私の初仕事ではないのか?と思い返す。


「ディーラ、これの事?」

「うん、そうだな。」


ゆったりと部屋の中に入ってきた人物にシャルさんが話し掛ければ、あの綺麗過ぎる笑みで返事をする。返り血を浴びながら歩いて来るディーラに眉をしかめれば、なにを勘違いしたのかこちらを見て笑われた。


「血が怖いの?」

『今更になってそれはないですね。』


ふいと顔を背けながらシャルさんの近くに行き、指示通り指の腹を少しナイフで切る。そして血が出てくるのを確認して金庫のくぼみへと血を垂らせば、ガチャンと重々しい音とともに金庫が開くような音がした。


『…本当にいい趣味してますよね…。』

「さすがロリコンというべきだね。」

「開いたのか。」


何時の間にここに来たのか、振り向けば返り血も何も浴びてないクロロが立っていた。
そして私はあの疑問に思っている事を聞いてみた。


『ねえ、クロロ。なんでクロロは今回無条件にディーラさんの情報を信じたの?』

「何を言っているんだ?今までだってそうだっただろう。…そういえばユナは初めてだったから知らないか。」

『何が?』

「あいつも結成時からの仲間だ。今更疑う気もない。」

『……え…?』


クロロ今、なんて言った?結成時?それは誰の事だ?
クロロに聞き返そうとした時、今まで以上の爆発音に耳を塞ぐ。シャルさんとクロロを見れば、何か起きたのか少し険しい表情で爆発音のした方を見ている。


「ユナ、少しここで待っていろ。」

『え…?なんで…?』

「ちょっとしたトラブルだ。」


少し躊躇しながらも頷けば、シャルさんは私の頭を撫でた後に2人とも部屋から出て行った。訳が分からないままその場に立っていれば、耳障りな笑い声が聞こえ、そちらを睨みつける。


『…あなたは行かなくていいんですか、ディーラさん。』

「何が起きたか気になる?」

『…気になる、と言ったら教えてくれるんですか?』

「いいよ、教えてあげよう。俺は今日ここに旅団が来る事漏らした。誰がどういう能力でどんな奴か。そして今戦っている敵は全員俺の駒。つまり自爆兵と言ったところだ。」

『なに、を…。』

「殺された途端、爆発して毒を撒き散らす。あ、死ぬようなやつじゃないから。」


楽しそうに笑う男を見て、私は身体がふるえ出す。奴は彼らに何をしたんだ?彼らは今…


『っ!クロ、ロ…!』


無事なのだろうか。


走り出そうとした私の腕を掴むディーラに私は目が合いそうになって、逸らしながらも睨みつける。


「君はやっぱり面白い。そんな君には1つ教えてあげよう。クロロ達、蜘蛛の奴らは俺を結成時からの仲間と思っている。」


それはどれだけ俺が動きやすくなったかわかる?


耳で囁かれた言葉に、全身が熱くなるような強烈な感情が込み上げてくる。ナイフを振り上げれば、少し遠くに着地しながらも可笑しそうに笑うディーラ。


「早くしないとみんな大怪我しちゃうよ?」

『魔眼のディオン…。』


ボソリと呟いた声にディーラ、いやディオンは笑みを消し、スッとこちらを見てくる。


『私は蜘蛛を守る。そしてあの人を守る為に…』


キッと睨みつける私にディオンはただそれを見てくる。
もう時間なんて最初からなかったんだ。もう奴は動いていた。そして今日、それを決行した。


『お前を殺す。』


私に残された時間はもうない。


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