ちゃいるど!!
□交渉と私
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私は今、限りなく気まずい。
『あの…』
「ん?どうかしたのかい?」
貼り付けたような笑顔に特徴的なペイントにふざけた服装。間違いなくヒソカさんそのものの外見だけど…
『あなた、誰ですか…?』
あれからヒソカさんと喫茶店で2日後に待ち合わせしたのだが、ここまで来るのは本当に至難の業だったのは言うまでもない。クロロ筆頭にみんなの過保護っぷりは呆れを越して賞賛に値する。
そして現在、私はヒソカさんと話をするつもりだったのだが…
「さすがユナ本当に君はいいね」
『……。私は悪夢でも見ているのでしょうね。』
「それはどういう事かな?」
『私、こっちのヒソカさんがいいです。』
新しく現れたヒソカさん。この場にヒソカさんが2人。悪夢と呼ばず何と呼ぶ。私は新しく現れた新ヒソカさんを睨みながら言えば、旧ヒソカさんはいきなり笑い出した。しかも棒読みに近い笑いで。
「かなり嫌われてるねヒソカ。」
「これも一種の愛情表現なんだよ」
『精神科行ってください。』
「もう手遅れだよ。あ、もう元に戻るね。」
そう言って旧ヒソカさんはバキバキ……え?
驚いて目を丸くしていれば、段々と顔が変わっていき最後には髪の長い美形な人になった。
『…えっと…大丈夫ですか…?』
「うん、疲れるけど慣れてるから。」
『そうですか…。』
おしぼりを渡せば「ありがとう」と言いながら、ペイントを落としていく男性。するとヒソカさんはクスクス笑いながら、席に座った。
「彼は今回の協力してもらうんだよ」
「情報提供だけだけどね。」
『あ、はい。』
周りをチラリと見て人が居ない事を確認する。ヒソカさんが居るからそんなヘマはないけど一応だ。
「魔眼のディオン。いや、今はディーラだっけ?」
『魔眼の…ディオン。』
「うん、闇組織の1つに所属する奴。毎回変装してるから見つけるのは難しい。魔眼って言うのはあいつの目を見た奴はどうやら思いのままになるからみたい。」
『念ですか…?』
頷く目の前の人物にやっとヒソカさんのメールの意味が理解できた。今回は彼の悪戯ではなく本当だったようだ。
「そいつ、かなり性格悪いよ。あいつが潜入したところは仲間内で殺し合いをして全滅してるから。」
その言葉にティーカップを持とうとした手がピタリと止まる。
仲間内…?今、奴は幻影旅団に潜入してる。なら今回のターゲットは…
『クロロ達って…事…?』
「そうなるね。」
「だから僕は面白くないから邪魔するんだよ僕の獲物を横取りするなんていい度胸だよねぇ…」
「ヒソカ、殺気出てる。ここ喫茶店なんだけど。」
「ごめんごめん…で、ユナ、このあとからの情報は取引だよ」
『取引?』
ヒソカさんが言う取引なんていい予感がしない。絶対にこの人は自分が楽しむ事しか考えてないんだ。私の精孔を開けたのがいい例だ。
「そんな睨まないでおくれよゾクゾクしちゃうじゃないか」
「『変態。』」
「2人して酷いなぁ取引は簡単だよ、僕と協力してディーラの企みを阻止すること」
『それだけ?』
「それだけ」
『……。嘘ね。あなたは私が居なくてもディーラを始末できる。それも旅団の誰にもバレずに。それを私に協力してなんて言うって事は…私も一緒に始末、そうじゃないですか?』
するとヒソカさんは少し驚いた表情をしたと思ったら、のどを鳴らすように笑い出した。やはり変態の考えることはわからないと再認識。たぶん私が頭をぶつけて狂ってしまわない限り一生分かり合えないだろう。
「君、やっぱりいねえ…いいよぉ!」
『……。よく友達やってられますね…。』
「こんな奴友達になった覚えないんだけど。」
『あ、すみません。大変失礼な勘違いをしました。』
「」
どうやらこの男性は表情は乏しいがそれなりに常識はもっているようだ。
「で、この子は協力しないってことでいいの?」
『いえ、させてください。』
「へえ…、罠ってわかっててするなんて変わってるね。」
『だってヒソカさんに任せても、きっと彼はディーラを始末させるだけではないのは確かです。…それに彼には私も用事があるので。』
彼は私記憶、名前、そしてなぜ子供なのかも知っていると言った。ならば彼に聞くしかない。だけどそれを聞いた時私は……彼を殺す時だ。
微かに震える手をギュッと握りしめて、カップに入った紅茶に映る自分の顔を睨む。でもこれは最悪の状況。まだ団員が念をかけられたとは言えないんだ。大丈夫、まだ大丈夫。
「なら交渉成立だね詳しくはメールでいい?」
『むしろそのほうが助かります。そろそろ帰らないと…』
噂をすればなんとやらとはまさにこの事だろう。鳴り出した携帯のメール着信音に携帯を取り出せばクロロ。
『…では私はもう帰ります。今日はありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。』
ペコリと頭を下げて足早にその場から去る。理由は簡単。近くにクロロが来ているからだ。きっとどこに行っていたのか聞かれるのと思うと、重くなった足で歩きながら理由を考える。
「どうだった?」
「あの子結構強いね。それに馬鹿でもない。うん、俺の弟と一回手合せさせたいかも。」
「それは無理だと思うよあの子はクロロがかなりご執着だからね」
「へえ…。」
「それに僕の獲物だあげないよ」
「あっそ。(あの子ご愁傷様だね。)」
そんな会話が繰り広げられてるなんて知らず、私は必死にクロロに言い訳をしていた。
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