白兎と冷酷人間

□馬鹿でも風邪
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「ルカ、これ団長の所持って行ってくれるかしら?」

『はーい!…あ、あれ…?』


クロロさんの所に行くついでにパクノダさんから渡された資料を貰った後、一瞬だけふらつく足元に目をパチクリさせる。


「大丈夫?体調悪いなら休んだほうがいいんじゃない?」

『だいじょーぶです!きっと朝にウボォーさんに投げ飛ばされたせいですよ。』

「でも平気だったじゃねぇか!流石だな!」


ジトリとウボォーさんを睨み付ければ、嫌味なんか全く気にせず笑い飛ばされてしまった。きっとウボォーさんには嫌味とか通じないんだろうな。


『じゃあ渡してきます…へ…?』

「ルカ!?」


グニャリと視界が歪んだと共に身体に衝撃がきて、倒れた事をやっと認識する。周りからは驚いた声で何か言ってる。
ヤバい、なんか頭が回らない。


「何してるね…。」

『はれ…?フェイタンさん…?』


しゃがんで私の顔を覗き込んでくるフェイタンさんは、不機嫌そうな表情をしている。あ、そうか、ここは通路で人が通る場所で、フェイタンさんが今通ろうとした場所。なるほど、私はフェイタンさんの道を塞いだのか。
(私は学習能力がないのか。)


『すみ、ません…。今…退きますから…。』


ヘラッと笑ってあまり力が入らない腕で身体を起き上がらせる。だけどやっぱり力尽きてまた地面に逆戻りしそうになる。でもなかなかその衝撃がこない。


『へ…?』

「お前馬鹿か…。」


ハァと溜め息をつくフェイタンさんだけど、いつもよりかなり顔が近くに見えるのは気のせいか?
あ、抱き締められてるんだ。


『フェイタンさんの顔…なんか近い…。』

「へ、変な事言うんじゃないよ!」

「ちょっとフェイタン!今ルカの体温…て熱っ!?」


次にシャルくんの心配した表情が映って、へらりと笑えば溜め息をつかれてしまった。そして近くでまた名前を呼ばれて、ゆっくりと見ればクロロさん。あ、パクノダさんが連れて来てくれたみたいだな…。


「今どんな気分だ?」

『なんか…熱いです…。あと…寒いし…グルグル回る…。』

「そうか…。典型的な風邪だな。」

「馬鹿でも風邪ひくんだな。」

『フィンクスさん…どういう意味ですか…。』


睨もうとしてもそんな力なんて残ってなくて、ジッと見ていれば罰悪そうな表情のフィンクスさんがいた。


「とにかく今は寝かせないとダメだよ。」

「でも確かルカの部屋って今朝ウボォーがぶっ壊してんじゃねえのか?」

『…あはは…。』

「すまねえ…。」


気にしないでください、なんて力無く言えば、更に申し訳ない表情するウボォーさんに私まで申し訳なる。


「ならフェイタンの部屋で寝かせてやれ。いつも寝てるだろ?」

「え!?団長知ってたの!?」

「まあな。」


まあな、じゃないでしょ。あなたがあの場に置いていった張本人なんだからさ。


「何でこんな奴寝かせなきゃいけないね…。」

『ぁー…私の事なら放っておいてください…。あ、でも奇襲はかけないでくださいね…?』


そんなのかけられたら今日が命日になるのは確実だ。
すると何故かみんなフェイタンさんをジッと見つめているので、私を見つめてみようと思ったらフェイタンさんに軽く頭を叩かれた。


「わかたね!!寝かせれば文句ないか!?」

「さすがフェイタンだな。今日はパクも出掛けしまうから困ってたんだ。もし嫌なら今日ヒソカが来るそうだが…」

「だからワタシの部屋で寝かせれば文句ないか!?」

「あぁ、ないな。」


何だか私抜きで色々決まってるけど、かなりフェイタンさん嫌々じゃない?てか今日ヒソカさん来るのかぁ…。お話したかったな…。


『やっぱり私、その辺に「行くよ。」…ぅわっ。』

「後でお見舞い行くからねー。」


ヒラヒラと手を振るシャルくんを私はフェイタンさんに抱えられながら頷いておいた。


『あのフェイタンさん…。嫌なら別にいいですよ…?私「少し黙るね。」…はい…。』


かなり不機嫌なフェイタンさんに私は口を閉ざせば、程よい揺れと何だか落ち着く雰囲気に目をつむる。そしてまた疑問。


『あれ…?ここって…。』


ここは私のいつも寝ているソファではなく、フェイタンさんの寝室。はて、フェイタンさんもボーっとしていたのかな?
(まさかフェイタンさんも風邪とか?)


「ほら、ささと寝るね。」

『へ…え…?ここって…。』

「いいから早く寝るね。」


フカフカとは言えないベッドだけどやっぱり何故か落ち着く。ソッと目を閉じれば、予想以上に早く睡魔が襲ってきたのですぐに寝る事が出来た。


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