白兎と冷酷人間

□不器用な仲直り
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『あー…。』


意味のない言葉を出して、後悔した。いや、目が覚めた事に後悔かな。
久々に見る自室の天井にベッド。それが嫌でも現実を叩きつけてきている気がする。


『私…負けちゃったんだよね…。』


フェイタンさんの靴によって。靴というのがとても屈辱的だけど、負けは負け。つまりここを出て行かなきゃならないんだ。
(いきなりのお別れか…。)


『まぁクロロさんがくれたキャッシュカードに沢山のお金が入ってるから、まだいいとして…問題は「やと起きたね。」ひぅ!?』


飛び起きて、バッと振り返ればいつものように見下してくれちゃっくれるフェイタンさん。…じゃなくて!


『お…おはよーございます。』

「今昼ね。」

『さ、さいですか…。』


やっばい、気まずい。もう放り出しちゃってくれてもいいですから、そのジッと見てくるのやめてくれませんかね。
なんて言えたらいいのにな、と考えていると意外にもフェイタンさんから話し始めてきてくれた。


「お前、負けたね。」

『そ、そうですね…。』

「勝てない賭けなんてするからね。」

『言い返す言葉もございません…。』


暗に出てけ、と言っているのかな。悲しくなってきたよ。


『あ、えーと…今すぐ準備するのでもう少し時間を「は?」…すみません。』


準備する時間すらくれないのか。さすがフェイタンさんだ。通常運転で暴君ですね。
だけどフェイタンさんの顔をチラリと見ると、何が不服なのか不機嫌そうな表情になっていた。
(こういう時は私が何かした時の表情だ。)


「誰が出ていけなんて言たね。」

『へ…?だ、だって…』

「ワタシ言たはずよ。お前の負けはワタシがお前を殺した時ね。」

『え、でもさっき私が負けって…。』


あ、なんかとっても嫌な予感がする。ソッと身を引こうとすれば、私の顔スレスレでフェイタンさんの刀が突き刺さったではないか。おかげでベッドが串刺しだ。
(目覚ましの次はベッドがご臨終とか…)


「今からお前殺すね。」

『あぁあああ!!気のせいであって欲しかった…!ちょっと待ってください!!いや、何で私が気絶してる時に殺さなかったんですか!?』

「決まてるね。」


まさか苦しむ顔が見たいとか言うんじゃないだろうか…。


「どういたぶるか考えていたらお前起きたね。」

『どうしよう。起きて良かったのかわからなくなってきた。』


起きても気絶しても結末が同じなんて酷すぎる。フェイタンさんはそんな私の心情なんて全く気にせず、近付いてくるもんだから私はベッドから飛び降りる。


『いたっ!なんか右足すごく痛い!』

「当たり前ね。ワタシ、骨粉々にしてやるはずだたね。よかたな、原型留めてて。」

『聞きたくない現実ありがとうございます。』


夜兎族の頑丈さ、マジで感謝感激だ!じゃなかったら、私もう死んでてもおかしくないもん!

尻餅つきながらズルズル後ろに下がれば、フェイタンさんは無表情で近付いてくる。今なら貞子の方が可愛いと思えるくらいの恐怖だ。

そして顔スレスレでまた刀を刺される。壁と私の髪の毛数本が刀の餌食となった。


『ヒッ…!』

「お前に選択肢をやるね。」


しゃがんで目線を合わせてきたフェイタンさんはただの恐怖の象徴でしかない。どうせ今死ぬか、後で死ぬかなんて絶望的な選択肢しかないだろうに。


「今死ぬか…」

ほらやっぱり。

「仲間になるか、どちね。」

『………………………はい?』


え、今、何か幻聴のようなものが…。
ポカーンとしていたら、更に髪の毛数本と私の肌が切れた。そしてフェイタンさんの眼光は鋭くなって更に恐怖が増した。


「ささとするね…!」

『ヒギィイイ!ちょ、切れてる切れてる!!』

「…なるほど、今死ぬか?」

『言います言います言わせてください!!』


ガバッと土下座して言えば、刀を引いてくれた。あ、危ない…私生きてるのが奇跡だ…。


『…私、正式に仲間って認めて…?』

「嫌なら別にいいね。」

『!あり、がとう、ございます…!』

「但し条件あるよ。次、苛つく笑顔向けてきたらすぐ殺すね。」


プイッとそっぽ向きながら言うフェイタンさんに自然と笑みがこぼれる。
(なんか小さな子供みたいだ。)


『はい!……てあれ?そのマスク…。』


マスクって言っても、いつもフェイタンさんがしてるやつの事だけど、私が指差しているのは今着けているやつ。あれは私がフェイタンさんにあげようと思って買ったやつで…


「…あたから着けただけね。」

『…クッキーどうでした?』

「…。不味くはなかたね。」


ぶっきらぼうに答えてくるフェイタンさんに、私が少し笑えば髪の毛を引っ張られたけど、その行動すらつい笑ってしまったのは言うまでもない。

そのあと更にヒートアップしそうになったところを、マチちゃんに止めてもらえたのは本当に助かったと思う。


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