白兎と冷酷人間

□わからない感情
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『フェイタンさーん!』

「……。」

『ギャッ!』


『ふぇ、フェイタンさブブッ!』


『ふぇ…フェイタ…ギャアアアアア!!』


『………。何故だ…。』


この頃フェイタンさんが変だ。いや、むしろあのヒソカさんと会った時からかなり変だ。
声を掛ければ何か投げつけられ、近くに行けば外に放り出される。
(あれ?何か変わりないような気が…)


『おかげで傷がたえない…。』


あ、それはいつもの事か。


「そんな隅っこで何やってるの、ルカ。」

『あ、シャルくん……とふぇ、フェ…ギャアアアアア!!』


顔を上げれば、話し掛けてくれたシャルくんと、まさかのフェイタンさん。
そしてやはり放り出された。だけど放り出された場所が日陰で本当によかった。


『う〜…。何だよー…。私何もしてないじゃん…。』


数分して広間に戻ればフェイタンさんは居なかった。よかったよかった…。
そのかわり、クロロさんとシャルくんとフィンクスさんとマチちゃんが居た。


『ま、マチちゃーん…。』

「またあんた外に放り出されたのかい?」

「ルカも飽きないねぇ…。」

『シャルくん、それは本気で言ってるんですか。』

「だって防ごうと思えば防げるじゃん。」

『防いだ後が怖いんです!フィンクスさんならわかりますよね!?』

「何で俺なんだよ。」

『…何となくです。』


だって前にフェイタンさんがフィンクスさんに八つ当たりしてもやり返してなかったし。
(唯一の私と同じ苦労人だと思う。)


『私何もしてないですよね?いやむしろ何かしていたなら、その時私は私じゃなかったんですよ。』

「自分を否定してまで有り得ないのかよ。」

「ルカ、フェイタンがそういう行動をとったのはいつからだ。」


今まで黙っていたクロロさんのいきなりの質問に少し考える。てかこの人本読んでたんじゃないのか。


『んー…、この頃なんですが、はっきりわかったのはヒソカさんと会った日です。』


今まで私の行動が気に食わなかったりか、私がやらかして外に放り出される事はあったけど、さすがにいきなり放り出される事はなかった。


「あ!思い出した!団長、あの時フェイタンと話してたよね?」

「ん?……あぁ、あれか。」

「あー、あの時ね。」

「そういやそうだな。んなら、納得いくな。」

『何ですかこの疎外感。私だけわからないんですけど。てか何であなた達の事なのに、私が八つ当たりされなきゃいけないんですか…!』


とばっちりもいいところだ。無実な私と、どう見てもやらかしたこの人達。何故私がこんな事になっている。


「それはお前の事だからだろう?」

『は…え?』


何言ってるだ、と言わんばかりのクロロさんだが、ちょっと待て。


『本人居ないのにその人物の話をするのは誰でもありますが、陰口はやめてくださいよ。そして陰口するなら真っ正面から言ってください。』

「陰口を叩くくらいならヒソカのように扱ってるさ。」

『ヒソカさん…不憫…。』


確かにあの人、ちょっと変だけど別に人を果物に例えるのと過度なスキンシップを抜かせば、普通に大丈夫な気がする。


『とにかく何を話してたか教えてくださいよ。じゃないと私の身体がもちません。』


ほら、とこの頃出来た生傷見せれば、クロロさんは考える仕草をする。考えないでさっさと言ってくれよ。


「ルカはフェイタンをどう思う。」

『へ…?フェイタンさん、ですか…。』

「正直に言え。」

『うーん…、フェイタンさんはひねくれ者だし、気分屋でまるで猫みたいです。』

「あいつが猫か…。ブフッ!」

『ちょっと笑わないでくださいよ、フィンクスさん。でも優しいですし、何となく落ち着きます。』


確かに上から目線なのは変わらないけど、さり気なく優しいし、何だかフェイタンさんの部屋に居るとすごく落ち着く。フェイタンさん自身の近くに居ると命の危険があるけど。


『なんですかねー。誰かと居て、落ち着くって事はよくありますけど、それとはちょっと違う気がするんですよねー。まぁこんな感じです。』


するとみんなして溜め息をつかれた。


「ルカが鈍いのは知ってたけど、ここまで鈍いとは思わなかったよ。」

『え、ちょっとちょっと!色々わからないんですけど!』


今日はみんなして何なんだ。私、こんな疎外感初めて何ですけど。


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