白兎と冷酷人間

□夜中の談話
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瓦礫に座りながら星空を見上げる私。
何でこうなったのかと言えば、全てはフェイタンさんのせいだ。


『うぅ…あの部屋、お化け出るって…。』


あの緋の目事件以降、私はあまり自分の部屋に居ない。だってお化け出たら…怖いし。
ハァ、と溜め息をつけば前から誰かが歩いてくる。気配で顔を上げればクロロさんだった。


『あ、こんばんはー。』

「…ルカか。また寝れないのか?」

『いやぁ…あの部屋で寝るのは…。』

「そうか。」


フッと笑ったクロロさんはジッと私を見てくるので首を傾げる。
するとクロロさんは私の顔に触れてきた。
(なんか恥ずかしいじゃないか…。)


『へ…あの…。』

「お前は夜に栄えるな。」

『そうですか…?あ、瞳のおかげじゃないですか?』

「そういえばルカの瞳も緋の目のようだな。」


ソッと目蓋に触れてくるクロロさん。
まさかこの人、この目も欲しいなんて言わないよね…?


「だが、緋の目よりも紅い。あいつが気に入ったのは何なんだろうな。」

『あいつ…?』

「俺はお前のその瞳を気に入ってる。そしてルカ自体の体質にも興味がある。」

『こんな真っ正面から言われたの初めてですね…。』


苦笑いすれば頭を撫でられた。もう頭を撫でられるような年じゃないけど、やけに落ち着いて強烈な眠気がくる。


「ここで寝たら、危ないぞ。」

『部屋で寝るよりかは、マシです…。』

「ならフェイタンの部屋で寝かせてもらえ。」

『は……?』


ヒョイと担がれて、眠気のせいで頭の反応が遅れた。
いやいや、そんな事よりこの人なんて言った?
(フェイタンさんの部屋、だと…?)


『な、なんでフェイタンさん何ですかぁ!』

「この頃あまり寝てないだろ?」

『…はい、まぁ…。それと何が関係あるんですか。』

「反応が悪いせいでフェイタンの機嫌があまり良くない。」

『えっ、まるで私のせいみたいに言わないでくださいよ!』

「とにかく、」


するとピタリと止まったクロロさんはその場に私おろす。そこは見慣れた場所で、私の後ろには扉。もちろん私の部屋の前ではない。


「お前じゃないとフェイタンの機嫌が直らないんだ、ルカ。」

『何面倒事押し付ける勢いで頼んでるんですか!』

「なら自分の部屋で寝るか?」

『………。』


究極の選択過ぎて何も言えない。どちらにせよ恐怖はつきものなんて、どういう事なんだ。


「頑張れよ。」

『ちょ!……本当に行っちゃった…。』


外に行きたくても、この真っ暗に近い廊下を1人で歩く勇気もない。なら私は今日この廊下で一夜を過ごすしかないようだ。
溜め息をつきながらフェイタンさんの部屋から少し離れた、月明かりの差す場所で膝を抱えながらうずくまる。


『そういえば、あいつって誰何だろ…。』


私を知ってるって事は蜘蛛の人だよね?なら私が会ってる人は、シャルくんにマチちゃんに…


「人の部屋の前でブツブツうるさいよ。」

『うわ!フェイタンさん、こんばんは。』


いつの間にか前に居たフェイタンさんを見上げながら言えば睨まれた。てかこの人、いつも睨んでこないか。
(それか馬鹿にしてるかどっちかだ。)


「何故お前こんな所に居るね。」

『ね、寝れなくて…。自分の部屋怖いので…。』

「ハ!そんな事でここに居るか。」


きっとフェイタンさんはお化けとかそういうの信じないし、居ても返り討ちにしちゃうからそんな事が言えるんだ。
何も言い返せなくて黙っていたら、その場から去ろうとするフェイタンさんの服の裾を掴んでしまった。
(立ち止まってくれたのが奇跡だ…。)


「何ね。」

『あ…あー…。』

「はきりしない奴ね。」

『………えーと…、部屋…泊めてくれませんかね…?』

「…は…?」

『え、えへー…。』


おかしなものを見るような目から逃れる為に、誤魔化すように笑うけど現状打破からは遠かったようだ。
てか、これは言ったらまずかっただろう、と今更ながら後悔。



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