白兎と冷酷人間
□初めてのお仕事
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『ああああ!!』
「うるさいね!!」
『ヒィ!す、すみません…!あ、フェイタンさん、私ちょっと目がトラブルに巻き込まれたんで今日のギャア!』
私の部屋の扉を壊さんばかりで入ってきたフェイタンさん。そして私が叫んだ理由を言えば、すごい勢いで瓦礫を投げられ、とっさに避ける。
壁が少し削れているのは見なかったことにしよう。
「それくらい避けられるなら心配ないよ。よかたね。」
『……。』
馬鹿にしたような表情で颯爽と私の部屋から出ていくフェイタンさんを横目に、私はその場で体育座りをする。
『ぅぅ…コンタクトが…外れない…。』
「ルカ、そろそろ…って何やってんの。」
『あ、シャルくん。これ完璧だと思いませんか!?』
「馬鹿じゃない?」
『えぇぇぇ…』
グルグルに顔全体に包帯を巻いた私を見て笑顔で毒を吐かれた。
でもそう言いながらも包帯を取ってくれるから優しい。
「そんなに嫌なの?」
『…せめて顔は見られたくなくて…。』
だって私はこっちの世界で買い物だってしたいし、お出かけしたりしたい。顔がわれちゃったらそんなの安心しながら出来るわけないじゃないか。
シャルくんはちょっと待っててね、と言って私の部屋を出てから数分、何か持って帰ってきた。
「はい、俺のじゃ大きいだろうからマチから帽子借りてきたよ。」
被せられたのは黒のニット帽子。ちょっと大きいけど、かなり嬉しい。
「それとマチが頑張ってね、だってさ。」
『わ、わ!マチちゃんありがとう…!あ、シャルくんもありがとう!』
「あとフェイタンにも言っておいたから、借りるといいよ。」
『え』
あのフェイタンさんが、だと…?絶対に物を貸してくれなさそうNo.1に輝くフェイタンさんが…?
唖然としていればシャルくんに背中を押された。
「フェイタンだってルカの事嫌ってるわけじゃないから、ちゃんと言えば大丈夫だよ。早く行かないと気が変わっちゃうよ。」
『う、うん!』
急かされるように言われて、小走りでフェイタンさんの部屋を探す。
てか私、フェイタンさんの部屋知らない…
『借りれないじゃん…!』
「廊下の真ん中で何やてるか。邪魔ね。」
『あ、フェイタンさん!ブッ!』
この頃フェイタンさんは私に何か投げてくるのが習慣になってないか?
投げられたものを見れば、黒のネックウォーマーみたいなもので、いつもフェイタンさんが着けているやつだ。
「汚したら承知しないよ。」
『う、わ…!フェイタンさん、ありがとうございます!!』
笑顔でお礼を言えば、微かに目を見開かれる。嬉しさのあまり笑顔が崩れていたのかもしれない。
するとフェイタンさんは無言でスタスタ歩いて行ってしまった。
『…私、そんな顔崩れていたのかな…。』
外を見ればちょうど月が見えて、そろそろ出発だという事が悲しいほどわかる。
でも昼間よりかは、やる気が出てきた。きっとマチちゃんとシャルくんとフェイタンさんのおかげだ。
『よぉし!頑張ろ!!』
「お前、いつでも元気だな…。」
通りかかったフィンクスさんに呆れ顔で言われた。
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