白兎と冷酷人間
□あまり変わらない現状
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『クロロさん、クロロさん!この間はカードありがとうございました!!』
「礼ならシャルに言え。」
『え?だってこれクロロさんのカードじゃ…』
「あ、それ俺が偽造したんだよ。ちゃんと使えるかわからなかったけど、その様子じゃ、ちゃんと使えたんだね。」
『え………』
じゃあ記念にあげる、と手のひらに置かれたのは、さっきクロロさんに渡そうとした偽ブラックカードで…
『ぅ、嘘だぁああああ!!ギャッ!?』
「人が読書してるのに、ノロマの分際で邪魔するんじゃないよ。」
私が嘆けば、頭目掛けて何かを投げてきたフェイタンさん。投げてものは瓦礫だった。道理で痛いわけだ。
『わ、私、犯罪者になっちゃったしゃないですか…!』
「今更何を言ってるんだ?」
『今更も何も、こちらの世界では真っ当な人生を歩みたかったんですよ…!』
「ならルカは前の世界では何してたの?」
うっ、と黙って視線を彷徨わせればフィンクスさんが広間にちょうど来た。話を変えるチャンスだと意気込んで、私はフィンクスさんに大げさに手を振る。
『あ!フィンクスさんだ、こんばんはー!!』
「…お前、何でそんなテンション高いんだ?」
『そ、そんな事「ねぇフィンクスもルカがどんな仕事してたか気になるよねー?」ノォオオオ!!!』
私の作戦はあっけなく散っていった。
どんな事があってもシャルくんは聞くつもり満々だ。でもここでフィンクスさんが興味なさげな事言ったら何とかなるじゃないか?
私は期待の眼差しを送れば、目があった。
あれ?何その笑み。
「気になるな。」
『………。』
「ルカ、団長命令だ。」
私の癒やしはどこにも存在する事がないのは今ここで、今更ながら確信した。
そして、団長というものはどの世界も私利私欲の為に命令してくるものだと実感した。
(もう団長って付くものには関わるのは絶対にやめよう…。)
『……麻薬の密輸入や売買。武器の密売や、人身売買です…。』
「…ルカってえげつないね。」
『偽造した人に言われたくないですよ、シャルくん!でも今言ったのは、私の居た組織の大方の仕事で、私の支団はあまり関わった事ないですよ。』
「なんで?」
『……。ちょっと特別なんです。』
「話すね。」
『いやぁ、それ「爪はがされたいか。」はい!是非とも話させてください!!』
何故私がいつも下手に出なきゃいけないんだろう。こういうのは聞いた相手が下手に出るんじゃないのか?
まぁ今始まった事じゃないけど。
『私達は専ら戦闘ですね。必要なくなった組織やら、刃向かってくる奴らの掃除です。あと、時々略奪ですかね…。』
「ほぅ…。かなり残酷な事をしてきたな。」
『私はあまり戦闘したくないんですけど、戦地に放り込まれたら戦うしかないじゃないですか。』
誰が喜んで殺し合いなんかするか。いつ自分が死んじゃうかわからない事して何がいいんだか。
ハァ、とため息した直後、外に繋がっている扉が開く音がして、振り向けばそこにはグラマーなお姉さん。
「早かったな、パクノダ。」
「そうかしら?いきなり来いなんて言うから驚いたわ。」
『………。』
な、なんだこれ…。すごく大人のムードなのだが…!え、なんか見ちゃいけない感じだ!
見てて恥ずかしくなって、シャルくんにとりあえず声を掛ける事にした。
『シャルくん、シャルくん。なんだか大人なムードだね…!』
「え?ルカ、何言ってるの?」
『ほ…?だ、だってクロロさんと、グラマーなお姉さんが…』
困った声で言えば、ブッ!と口を押さえながら震えるシャルくんと、ゲラゲラ笑い出すフィンクスさん。
え、え、何事だ、チラリとフェイタンさんを見れば、微かに震えてる…!
「ちょ!ルカ!へ、変な事、言わないでよ…!」
「おま…、正真正銘の…バカだな…!ギャハハハハハハ!」
『えぇ…、フェイタンさ…いたっ!』
あの人、そっぽ向いて微かに震えながら石投げてきたよ…!
てかちゃんと命中したんだけど!背中にも目があるのか。
(あの人なら有り得なくもない。)
「初めまして、私はパクノダ。幻影旅団と言ったらわかるかしら…?」
私が一番最初、雑技団と間違えたやつか。ここの組織の名前なんだよね?
頷けば、目線を合わせてしゃがんでくれていたパクノダさんの顔が優しい笑う。
『お、大人の女性だ…!』
率直な感想を言ったのに、その場の笑い声はヒートアップした。更にクロロさんまで笑ってる!
「可愛い子ね。私は幻影旅団の1人よ。」
『え…?なか、ま…?』
頷かれて、今やっとシャルくん達が最初に笑った意味がわかった。
は、恥ずかしい…!
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