白兎と冷酷人間
□買い物?いえ、万引きです
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「起きろ。」
『イタッ!……ってフェイタンさん、どうしたんですか…?』
「外行くよ。」
『………。外…?』
てかこの人は女の子の部屋に無遠慮に入ってきたのか。それに自分の傘で私の頭を叩いて起こしてくるとか…。
いやいや、その前に今この目の前の方は外へ行くと…?
「ワタシを待たせるのか。いつからそんないい身分になたね、ノロマ。」
『!!わ、わ!すみません!すぐに用意します!!』
今にも殺されそうな勢いだったので、ベッドから飛び降りてダッシュで洗面所まで行けばマチちゃんに会った。
(いつ見ても可愛いなぁ…。)
『マチちゃんおはよう!』
「ルカ、朝から元気だね。」
『早くしないと私の命が…!』
マチちゃんは昨日初めてちゃんと話した人だ。そして言葉のキャッチボールが出来る、ごくわずかな常識人でもある。
今のところフィンクスさんもかな…?シャルくんはよくわからないけど。
(まずシャルくんの口調って有無を言わせない感じがする。)
「今日は久しぶりに晴れてるから温かいらしいよ。」
『へぇ、どうりで……え?晴れ?』
何て事だ。ここに居てから、一週間くらいこのアジトから出てない私は太陽の存在をすっかり忘れていた。
てかやはりこちらの世界にも太陽はあるのか、忌々しい…!
『ど、どうしよう…!』
「あんた、フェイタン待たせてるんじゃないの?」
『そ、そうだ!!ま、まままマチちゃん!』
「私そんな名前じゃないよ。」
『ご、ごめんね!じゃなくて、日焼け止めクリームある!?』
「は…?」
『お、お待たせ…ヒィ!』
「お前、ノロマの分際でワタシをこんな待たせる気か、グズ。」
『ぐ、グズって…。』
「グズで許してやるワタシに感謝するべきね。」
上から目線で言ってくるフェイタンさんはどうやら今日も通常運転だ。てかグズって呼ばれて感謝したら、生き物として終わっている気がするのだが。
『あの、どちらに出掛けるんですか?てか私は必要なんですか…?』
「誰のせいで食料底尽きたと思てるね。」
それは私のせいだ。いや、だって仕方ないんだよ、種族の特性なんだからさ…。私が目線を逸らせば、嫌みたらしく鼻で笑われた。
(言い返せない自分が悲しい…!)
「あとお前の生活用品もね。団長命令されたよ。」
『ご、ごめんなさい…。』
「なら行くよ。……お前、何で傘さしてるか。」
『あ、えーと、…私肌弱いんですよ。だからちょっと太陽は…。』
「ハ!ノロマのくせにひ弱か。」
『すみません…。』
何故こんな言われっぱなし何だろうか。だからといって反論できるほど、私は勇者じゃない。反論出来てたら、こんな人生歩んでないだろうに。
『ぅ…。』
久しぶりの太陽の光の明るさに、もう自室に帰りたくなった。(断じて私は引きこもりじゃない。)
日焼け止めだって塗りだくったし、番傘だってちゃんと差してるんだ!こ、怖くないもんね…!
数十分歩けば、やっと街らしきものが見えて、沢山人が歩いている。
『おぉ!人だ!…いだっ!』
「うるさいよ。黙るね。」
『はい…。』
トボトボと着いて行けば、ショッピングモールにたどり着いて、ピタリとフェイタンさんは立ち止まる。
「今から別行動ね。お前は生活用品買うといいよ。」
『…とても言いにくいのですが、私、お金持ってないです…。』
「分かりきた事、言うんじゃないよ。団長が貸してくれたね。」
『こ、これは…!ぶ、ブラックカード!』
うわ!うわ!ブラックカードだ!見た事はあったけど、まさか使う時がくるとは…!
私が笑顔で受け取れば、何時の間にかフェイタンさんは居なくなってた。はやー…。
『よし!なら私も買わなければ!!』
買い物なんて久しぶり過ぎて、スキップしてしまったのは言うまでもない。
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