白兎と冷酷人間
□ゴーイングマイウェイ集団
1ページ/2ページ
『ぅ…。』
「起きたか。」
『……。おやすみ…いだだだだだ!!』
起きなきゃ良かったなんて心底思った。夢なら良かったなんてこの生きてきた中で一番心底願った。
だけどこの起きて間もない私の髪の毛を引っ張る黒づくめは、そんな現実逃避も許してくれるわけなく、今も楽しそうに髪の毛を引っ張ってくれちゃったりする。
「ワタシが居るのに寝るなんて、いい度胸ね。」
『すみません!度胸じゃなくて現実逃避してましたぁああ!』
「ならこれが現実だと試してやろか。」
『ちゃんと今噛みしめてますので大丈夫です!!本当にすみまいたぁあああ!!』
「うるさいね。」
そう言って、ペイッと放られた私は自分の髪の毛を自分で撫でるというなんとも可哀想な事をする。
そこで頭にコツリと当たる感覚で気付く。
『わ、私の右指…!右指がある!てか五体満足だ…!』
「なんなら、今からなくすよ。」
『なんで!?そういうのは私が気絶してるときにやるはずですよ!?』
「気絶してたら、悲鳴あげないよ。そんなのつまらないね。」
『え、えぇー…。ちょ!大丈夫ですから、近付かないでください!』
だがそんな事当たり前に聞いてくれる事もなく、ガシリと左腕を掴まれる。
(あ、私死んだな。)
『ヒッ!』
「…お前、何で治てるね。」
『へ…?』
「フィンクスのパンチくらたのに、何で治てるか。」
『………あぁ!』
あれか、あのジャージ男さんのパンチか。あれは確かに痛かったなぁ。人間ってやっぱり強い人も居るんだね、うん。
1人で納得していたら、掴んでいる力を強くされて慌てる。
『わ、私の体質ですよ…!いや、私の種族のですかね…?』
「そうか。なら行くよ。」
『え、どこに。』
「団長の所に決まってるよ。」
お前馬鹿だろ、みたいな表情で見られて何だか反論したかったけど、私の長年の経験がそれを止めた。危ない危ない…。
『ちょ、引きずらないでください!』
「なら歩け。」
『歩きますとも!いえ、歩かせてください!!』
するとパッと離されて、地面とこんにちはするはめになった。上から鼻で笑われたが、大丈夫、こんな事慣れっこだ。
するとまたあの広間に着いて、なんか前より人が沢山居た。
うわぁ…みんな強そう。
「おい団長!こんなちっこいのがフィンクスの拳を受け止めたのかよ!」
『デカッ!』
軽くこの人2メートル越えてるよ!てか服がなんか原始的だ…!
そしてあの団長さんは、優雅に読書をしていた視線をこっちに移してきた。
「身体の調子はどうだ。」
『え…?えーと……別に何ら変わりもないですよ?』
ほら、と軽くジャンプしたり、手を回してみたりすれば周りがざわつく。
「フィンクス、あんた手加減したの?」
「マチ、ならお前はしたのかよ。」
「マチとフィンクスの攻撃を食らって平気か…。なかなかすげぇ嬢ちゃんじゃねぇか。」
なんかあれが侍というのか定かじゃないが、そんな人物が楽しそうに笑い出した。するとあの原始的な人がドスドス近付いてきた。
やっぱりデカい。
「ちっちゃいくせにやるなぁ!!」
『ギャッ!』
「あ。」
「やべぇ、やっちまった…。」
私はデカい人に叩かれて、吹っ飛んだ。
あのかわいい系男子が声を上げたのと同時に壁にダイビングした私。ヤバいあの人、人間なのに怪力過ぎる。咄嗟に受け身をとった自分を誉めてやりたいくらいだ。
「ウボォー、あの子死んじゃったかもよ…?」
『あ、いえ大丈夫です。いてててて…。』
よいしょ、と壁にはまった右半身を抜いて言えばかなり驚いた表情の皆さん。
「何で生きてるの!?」
『えぇ!?なんかすみません…。てか何で人間なのにこんな怪力なんですか!?』
.