ちゃいるど!!

□未知と私
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「恩返しって事か?」

『うーん…。たしかに恩返しもないと言えば嘘になりますけど、私はきっとクロロを尊敬してるんですね。いや、心酔?』


そういえば何で居るんだろう。深く考えた事がなかった。
1人になるのが嫌なのか、と聞かれれば嫌だけど別に死ぬほど嫌なわけじゃない。
やはり私はクロロを尊敬しているのだろうか。


『きっと私はクロロが大好きなんですね、自分が思うほどに。そしてクロロが大事にしてる蜘蛛の皆さんも大好きです。結局、個人的に皆さんが大好きだからですね。』


答えにならなくてすみません、と苦笑いしながら言えば、フランクリンさんは慣れない手つきで、でも出来るだけ優しく頭を撫でてくれた。


「いや、ユナはちゃんと俺の答えに答えてくれた。ありがとう。」

『それなら良かったです。あ、パクさんごちそうさまでした。』


食器をさげようとしたところでちょうどウヴォーさんに外から呼ばれる。


「ユナー!早くやろうぜー!」

『あ、はーい!』


駆け足で食器を置いて外に出れば、色々な大きさの瓦礫。
ウヴォーさんには新しい能力の手伝いをしてもらってるのだ。1人だったらこんな瓦礫、すぐには見つからないだろうし。


「よし、投げるぞ!」

『え!?な、投げなくて大丈夫ですよ!?』

「ピンチになった時のほうが能力、発揮するかもしれないじゃねぇか。」

『いや、私はそんな…!』


私の抗議の声なんか全く無視するウヴォーさんは、笑顔で大きな瓦礫を投げてくる。
あ、あ、瓦礫が…!
そう思って目をつむったが、なかなか衝撃がこない事に恐る恐る目を開ければ、瓦礫がない…?
どうしてだ、と思った瞬間、少し遠くで聞こえてきた衝撃音と聞き覚えのある声…いや、悲鳴。


『あ…今の声…』

「フィンクスだな。」

「てめぇえええ!ユナ!」

『ひっ…!』


背後に鬼が見える勢いで走ってくるフィンクスさんに私は固まる。
でも私が全力で逃げたって勝てるわけがなく、捕まりそうになったところで目をつむれば、あれ?フィンクスさんが居ない…。


『う、ウヴォーさん…フィンクスさんは…。』

「その球体の中じゃねぇか?」


言われて指を差された方に視線を送れば、みるみる自分でもわかるくらい顔が青ざめていく。


『ど、どうしよう…!』

「とにかく、外に出してやればいいんじゃねぇか?」

『でも…もし…』


私は今までこの能力はまだ瓦礫とか、コップなどでしかやった事がない。つまり、生きているものでやった事がないのだ。
もし、生き物を入れたらダメだったら…?
フィンクスさん…死んで…


『っ…!ぅ、あ…』

「お、おい!ユナ!?」

「何してるね。」

「お、フェイタン。それがよぉ…」

『フェイタンさん…私…フィンクスさんを、この中に…。』


ボロボロ泣きながら、ビー玉くらいの浮いている球体を指差せば、鼻で笑われた。


「こんなことで死ぬなら、フィンクスはへなちょこね。」

『へ、へなちょこ…。』

「ととと出してやればいいよ。」


そう言われて、震える手でイメージすればフィンクスさんが出てきた。
だけどホッとしたのもつかぬま、フィンクスさんは倒れた。


『ど…どう…』

「気を失てるだけね。」

『え…?』


よく見れば息をしてる。…い、生きてる…。


『良かったぁ…。』

「お、おい!泣くなよ!」


あたふたするウヴォーさんに私は笑いながら泣いた。




「どうやら、あの球体は生きているものでも大丈夫なようだな。」

「団長。」

「団長、どうやらあんたかなり好かれてるようだな。」

「それはお前もだろう?フランクリン。」

「そうかもな。でもまんざらでもないだろう?」

「その言葉そのまま返してやるよ。」


微かに笑うフランクリンとクロロを横目にパクノダも未だに笑いながら泣いているユナと、慌てているウヴォーとフェイタンを見る。



私はその後、フィンクスさんに追いかけられ、更に怒られたのは言うまでもない。



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