白兎と冷酷人間
□最悪な出会い
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『なんだ…ここは…。』
夜の美術館なのはわかる。けど私はそんな人の作品を見るようなロマンチストではないので無縁の場所だ。
いやいやそんな事より!
『やっぱりあの団長ぉおおおお!!』
あいつやりやがった…!そりゃあそうだよね、いつも私を殺すような事をするあの笑顔をいつも張り付けた奴がプレゼントなんておかしいよね!!
『全部団長のせいだ…!』
私が春雨とかふざけた名前の海賊に入ったのだって、同じ所に入団させられたのだって、戦地にいつも投げ出されたのだって…!全部全部全部、あの戦闘狂の始終笑顔の神威のせいだ…!
(人生メチャクチャだよ!)
『てか、面白い事が起きるからなんて言って私の指を折る勢いで指輪をつけたのも団長だし…!』
明らかここ宇宙じゃないし、明らかここどっかの星だよ!
あぁあぁあぁ、どうしよう私平和主義者だからこんな非日常望んでないし!
『いや、待てよ…?私こうやって晴れて団長の魔の手から逃げれたんだよね…?なら自由じゃないか…!』
なら万々歳じゃないか!私何しようかな。まずお金稼がなきゃ生きていけない。…まぁ運び屋的なのやればいいかな?それで家には犬と猫を…
ガチャ
『………。』
「………。」
「何突っ立ってんだ?フェイタン早く…」
え、何てこった人が居た。てか人間?なら地球なのここ。まぁ、どうでもいいがとにかく状況はヤバい。だってこの人達、血の匂いプンプンするし、いやむしろ返り血浴びてるし。
『えーと…、私怪しい者じゃないんで殺さないでください。』
「夜中の美術館に居る奴が言う言葉じゃないね。」
ですよねぇ……あはははは…。
静かになった空間に私の声だけ響いた。ヤバい、逃げなきゃ。そう思って後ろに少し下がったら、さっきまで居た人が居なくなって……え?
『ギャー!う、後ろからとか卑怯です…!』
「!?止めたか…。お前楽しみがいがありそうね。」
『いやいやいやいやいや!!ただの正当防衛で身体が勝手に動いただけですから…!私何も盗んでないんで存分に盗んでください…!』
「何故ワタシ達が盗賊だとわかたね。」
『え!?管理人さんにでも成りすましてたんですか!?その返り血でその嘘は辛いですよ!』
普通に会話しているように思えるが、こんな会話しながらも攻撃は止まない。
(ちょ、人間ってこんな強いなんて聞いてない…!)
私の背後にある扉ではもう1人の人が口笛を吹いて、興味津々に私達の戦いを見ている。見ているならこの目の前の人止めて…!
『あの団長…!やっぱりロクな事しない…!』
するとピタリと目の前の人の手が止まる。口笛吹いた人も何か真顔になったし。
これは何か逃げるチャンス出来たのか?
『グエッ!』
「逃がさないよ。」
『で、ですよねー…。』
「お前、団長と知り合いか?」
『は…?知り合いといえば知り合いですけど…。』
「団長の女じゃねぇ?」
『ブフッ!ちょ、冗談よしてください!んなの命がいくつあっても足りない…!』
「じゃあお前何ね。」
そう言われて思い返されるのは今までの理不尽な思い出ばかり。私よく18年間生きてたよ、本当に。
「おい、聞いてんのか?」
『あ、すみません。私は団長の……オモチャ的存在ですね、きっと。』
「………。」
「………。」
自分でもかなり的確な答えだと思う……悲しいくらいにね。目の前はまるで珍獣を見るような目で見てくるけど、だってこれが事実なんだもん。
「とにかく団長に聞いてみるか。」
「目当てのものないよ。帰るね。」
『なら私も…ギャッ!』
「逃がさない、て言たよ。聞いてなかたか。」
『………。(この人さっきから扱いひどくないか。)』
団長から逃げる事は一生無理なのはわかった。
だがまずさっきから私の髪を持って引きずる、この小さい黒い奴を何とかしたい。そろそろ私は円形脱毛以上の脱毛をしてしまう気がする。
『あの黒づくめさん、黒づくめさん。出来れば髪引っ張るの止めてもらえませんか?髪の毛が抜け…いたっ!?』
ちょ、この人今思い切り引っ張った!
「そんなの知てるよ。痛みで歪んだ顔が見たくてやるね。」
何て事だ。この人も違う意味で団長レベルに危険だ。
その部屋から出たら、更に色んな場所から爆音が聞こえて、何となく泣きたくなった。
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