ちゃいるど!!
□クロロと私
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周りを見ればレンガ作りの街でどこかヨーロッパのような風景に観光をしている気分になる。キョロキョロすればクロロに苦笑いされたので、パクノダさんが持ってきてくれた帽子で少し顔を隠す。
「迷子になるなよ?」
『わ、わかってる…。』
そう言って手を握られた私はまた恥ずかしくなり少し俯く。周りから見ればこれは親子なのだろうか、あるいは兄妹という事になるのか。
なら実に嬉しい限りだ。何時ものようにスーツの着こなしは完璧だ。ただ頭の包帯は未だに謎だが…。
「ここだ。」
『ここ…?』
入ってみれば私の目が輝くのが自分でもわかる。本特有の匂いに右を見ても左を見ても全て本だらけ。すごい、の一言だ。すると店の人なのかおじいさんがクロロを見つけると、微笑むように笑う。
「久しぶりだなロイス。お嬢さんは家族かい?」
「まぁそんなとこだ。」
『あ、始めまして!ユナと言います。』
「はい、始めまして。行儀のいい子だねぇ。」
くしゃりとシワになる笑顔はどこか落ち着くような笑顔だ。そしておじいさんとクロロが一言二言交わすと、クロロは奥へ入っていくので会釈をしてから追い掛ける。
そしてさっき疑問に思った事を聞くことにした。
『ロイスって誰…?』
「俺の偽名だ。」
『あ、そうなんだ。』
「聞かないのか?理由を」
『…たぶん何時かわかるかもしれないから、無理に知ろうとは思わないかな。』
そう縮まった距離と言ってもそれがどのくらいかなんて私にはわからない。だから私は聞かない。包帯の事だって偽名の事だってそうだ。臆病だと思うならそれでいい。でもそれが一番妥当な判断だと私は思うのだ。
そして本屋では簡単な本を数冊とクロロの本を数冊買って店から出た。
またあのお店行きたいな…
「かなり必死に見ていたがわかったのか?」
『なんとなく…?午前に作ってくれたクロロの50音表を覚えてたから。』
「そうか。本は好きか?」
『うん!好きだよ!』
「字が読めなかったのにか?」
この人は本当にいい性格をしている。何故そんな痛いところを突いてくるんだ。私は俯きながら黙っていれば、上からクロロの手が頭に乗っかる。
「悪かった。また今度行こう。」
『また連れて来てくれるの…?』
上を向けば、頷かれて嬉しくなりつい抱きついてしまった。
『ありがとう!クロロ!』
たぶんだがこの世界に来て私は精神的にも子供になってきてる気がする。
こんな感情に起伏があったり、コロコロ表情を変える事、そして感情のままに行動した今の事、きっと前の世界の私はそんな事なかった気がする…。
まぁもうそんな事で焦っても仕方ないだろう。そう思いながら、クロロは私の頭をまた撫でてくれた。
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