ちゃいるど!!

□好青年と私
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ここに来て3日。
私は3日前の自分が今では鼻で笑いたくなる。
寝床は見つけた。まぁ寝床とはほぼ言い難い場所だが、何故かここ(ゴミ山)に住んでる人はここに近づこうとしない。
なにか住んでいるのかと思えば、全くいい意味で期待外れな程何も居なかった。
そうここまではいいのだ。私がいつも通りだったら、順調にいくなんて思いもしないだろう。
きっと頭まで幼児化しているのだろう。じゃなきゃ、食料の調達を考えないはずがない。
盗みも奪う事すら私には出来ない、何て臆病なんだろう。

だが3日もすればこの小さな身体に今まで裕福に暮らしていたであろう私に、もう動く体力すら残っていない。
少し身体を動かせば、この間この廃墟から見つけた本一冊。見つけた時どれほど喜び、開いてどれほど絶望した事か。

もう私はここで死ぬのだろうか。本と一緒に死ねるなら、幸せではないのか?
誰も探してくれない同士で少し寂しくない気もする。
段々と瞼が落ちていき、寝てしまおうかと思った矢先、何者か地面を踏む音が聞こえた。ふと目を開ければ、少し先には黒いスーツの好青年。
場所に不釣り合い過ぎて、3日ぶりに笑った気がする。
すると何故か微かに目を見開く好青年。そんなに私の笑った顔が不格好だったのか…。
そんな事を思っていた時だ


「君は誰なんだい?」


ん…?好青年は誰に話しかけたんだ?周りをキョロキョロするが、この空間には好青年と私だけ。
という事は私に問いかけたのか?むしろ言葉は通じる事に驚きだ。


『私…でしょうか…?』

「そう君。」

『私は…死にかけの人間です。』


何ともまぁ面白い返答になったものだ。でもあながち間違ってはいない。
すると好青年はキョトンとした後、堪えるように笑い出す。


『あの…答えになってませんでしたか?』

「あぁ、ごめんごめん。間違ってないよ。ならば君は何故ここに居るのかな?」

『ここに…。たぶん生きるためでした。』

「たぶん?」

『はい。私、ここで生きていけない事がわかったので。』


はは…と苦笑いをすれば、好青年は興味深そうに返事をした。
我ながらかなり的確な答えを言ったと思う。


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