ちゃいるど!!

□好青年と私
2ページ/3ページ



『あの、質問してもいいでしょうか?』

「ん?なに?」


まるでさっきから子供を扱うような言動………あぁ、今私子供だった。可愛げの欠片もないのは仕方ないだろう。
そして貼り付けたような笑顔。嘘くさい笑顔に少々イラついたが、まぁ久しぶりに会話が出来るのだからこれくらいは仕方ない。


『あなたは、何をしにここに来たのですか?』

「あぁ…。少し忘れ物を取りにね。」

『え』


何てことだ。この廃墟はこの人のテリトリーだったのか。周りが近付かないのは何かに畏怖しているから。それはきっとこの人に対してだ。何てことだ、寿命を短くしたのは間違いないだろう。


『あなたの所有物でしたか…。』

「俺だけじゃなくて、俺達かな。」


複数ときたか。もう死亡フラグは逃れられないだろう。


『そうですか…。あ、ならこれあなたの物ですか?』


好青年に見せるようにしたのは、私と3日過ごした本一冊。読めないとはいえ、相棒を渡すような気分ですごく寂しいが。


「それだ。」

『あ、ならお返しします。』


好青年に近付いて、はい、と渡せばまた驚かれる。え、なんでよ。


「君が拾ったんじゃないの?」

『拾ったのはそうですけど…、所有者が居るならばそっちに渡すのがいいかと…』

「盗まないの?」

『盗!?そんな事出来ませんって!』


ましてや本人が居る前で出来るなら褒め称えてやりたいくらいだ。
すると好青年は、また興味深そうな返事をする。


「君、今までどこに居たの?なんでここに居るの?」


さっきから何でこうも好青年は答えづらい聞いてくるのだろうか。ここに連れて来たのがまるで目の前の人物のような錯覚に陥る。


『わからない…です…。目が覚めたらゴミ山に居て…』


あぁ、話してみれば本当に何故なんだ。
いったい私が何をしたというのか。
目頭が熱くなるような感覚の次には、視界が好青年が霞んでいた。
いい年で全く知らない人の前で泣くなんて、恥ずかしい。…そうだ、今は子供だった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ