白兎と冷酷人間

□やっと到着
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『あれ…?』


たしかに路なりに走った。走ったはずなのに少し先には大きな屋敷。
もしかして執事室通り抜けて、イルミさんの家に着いちゃったのかな。でもそれってゴトーさんに会ってないよね?ゴトーさん居ないとダメなのかな?


『そもそも執事室がどこだったんだ…。』


本邸より見つかりにくいもんだったり?
考えながら歩いていれば、いきなり私目掛けて跳んでくる刃物を傘で落としていく。


『何度目だ…。』


進めば必ずあるトラップ。どれだけ危ない家なんだし!そもそもお客を招く気ないと見た。
さて、執事室を見つける為にまた罠をくぐり抜けながら探すのは面倒。てかみんなに早く帰って来るって言っちゃったし。もしイルミさんの家族に会っちゃったら…


『イルミさんの話聞いてるはずだよね?………よし、進もう。』


きっとイルミさんだってわかってくれるはず……だよね?
かなりの不安を抱えながらも、トラップをくぐり抜けながら走っていけば屋敷に到着。だけど何故か数人の男性が出迎えてくれた。


『……イルミさんのご兄弟さんですか…?』

「いえ、違います。お待ちしておりましたルカ様。」


スッと綺麗なお辞儀をする男の人達。イルミさんの兄弟ではないという事は…もしや、もしかしなくても…


『ゴトーさん…という方はいらっしゃいますか…?』

「はい、私でございます。」


いたー!!やっぱり私は間違えてなかった!


『会いたかったです…!』

「ありがとうございます。」


半泣き状態でゴトーさんの手を掴む私に、ゴトーさんは振り払うのでもなく上品に笑みを浮かべてくれた。蜘蛛のみんなにはない、優しさに本気で涙が出そうになる。みんなに足りないのはこの紳士的な態度だよ!…あーでもそんな事されたら逆に怖いな。絶対なんか裏がある気がしてならない。



『あ、あの、私イルミさんに用事がありまして!』

「はい、イルミ坊ちゃまからは聞いております。」

『よかったぁ…。』


これで知らないなんて言われたら、本当にどうしようかと思ったけど、これなら早く行けそうだ。ヘラヘラ笑う私にゴトーさんは執事室に案内してくれる。あ、てかここ執事室だったんだ。……デカくない?天井高いし、家具が煌びやかな光を放ってるし。


「どうぞ。」

『わあ…!ありがとうございます!』


高級そうなソファに美味しそうなお菓子に紅茶。……うん、なんかすごく格差社会を感じる。執事室でこんな豪華なら、イルミさんの家ってどうなんだ。もう王宮なんて夢じゃないよ。
出された紅茶にケーキはやっぱり美味しくて、無意識に笑みが浮かぶほどだ。あー幸せ……じゃなくて!イルミさんの家に行かないと。でも…ケーキ食べてからでも…


「なに寛いでんの。」


ダメだった。いや、そんな事よりなんで音もなくイルミさんが何時の間にか隣にいらっしゃるんだ?そしてなんで私は首にあの物騒なものを突きつけられてるんだ?え?私悪い事なんて何一つしてないよ。


『イルミさん…なんでここに居るんですか。』

「俺の家の敷地なんだからどこに居ようが勝手だろ?」

『ならなんで門の所まで来てくれないんですか!』

「嫌だよ面倒くさい。」


ちょ、この人、呼んでおいてこれはないだろ。私勝手に来たんじゃなくて、あなたに呼ばれて来たんだよ!?
でもそんな事言ったら私の命が終了しちゃうから、紅茶と一緒に飲み込んじゃおう。あ、なんか今私うまい事言った。


『いたただだだ!!な、なんで髪引っ張るんですか!!』

「なんかムカついたから。てか早く行こう。」

『え?貰ったら私もう帰りますよ?』

「持ってきてるわけないじゃん。だから俺の家行くよ。」


当たり前のように持ってきてないなんて言われて、私は口の端がヒクリとなった。落ち着け私。イルミさんと蜘蛛のみんなの態度は同じくらいなんだ。だからこのぐらいで怒ってはいけない。そもそも怒ってしまったら任務失敗だ。


『あ、ゴトーさんごちそうさまでした。おいしかったです。』

「はい、ありがとうございます。では行ってらっしゃいませ、イルミ坊ちゃま、ルカ様。」


またあの優雅な笑みにお辞儀をされて、私も会釈をして執事室を出る。


『ゴトーさんって物腰柔らかくて、本当にいい人ですよね!』

「そう?でも俺ら以外にはあんな態度はしないよ。」

『えっ。』

「いつもだったらもっと無表情だし。」

『……あの私、お客さんじゃなかったから…』

「ゴトーのコインに殺されてたんじゃない?」

『私コインで殺されるんですか。斬新すぎます。』

「良かったじゃん。」

『何がよかったんで「うるさいよ。」ごめんなさい。』


そんな会話を繰り広げていれば、また少し遠くに大きな家が見えていたのに私は気付かなかった。


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