白兎と冷酷人間

□意外と適応
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これは何なんだろう。私の目の前に居る白い四本足の動物。口からチラチラ見える鋭い牙。そして何より、血の臭いがする。


『ぜ…ゼブロさん…。これは…』

「あぁ、ミケだよ。」


みけ…みけ…ミケ…ミケ!?


『そ、そんな!フワフワでモフモフなミケちゃんは!?』

「はは…。あとミケは雄だよ。」

『んなぁ!?』


み、ミケちゃん…いや、くん…。おっきくて、でもフワフワでモフモフで愛らしいミケちゃん像が…!


『うぅ…現実は辛いです…。』

「でも噛みついてはこないよ。触ってごらん?」


ゼブロさんの言葉に私はミケくんとゼブロさんを交互に見る。触ってみたい。だけど触った途端、あの鋭い牙でガブリとされたりしないよね?さすがに私だって噛みつかれた事はないからそれは困るよ?


『み…ミケくーん…。』


ソッと伸ばした手に何にも反応しない。そして触れた。
確かにモフモフではないけどフサフサしてる。あ、なんかミケくんが可愛らしく見えてきた。目は何の感情も写してないけど。


『ミケくーん、私はルカです。仲良くしましょーね。』

「(怖がらずにミケに触れるとは…)…大したもんだ。」

『へ?何か言いましたか?』

「いや、何でもないよ。さて、先に行こうか。」


頷いた私はゼブロさんの後を追って歩き出す。するとミケくんも動き出して、私の後ろを………え?


『ゼブロさん、ミケくんは正式に入って来た人に着いて来るんですか?』

「いや…私もこんな事初めてだよ。」


え?じゃあ私が初めて?後ろから付いて来るミケくんをジッと見る。ミケくんもあの無感情の瞳でジッと見てくるけど、それが段々愛らしく見えてきて、私の表情もそれに習って緩んでいく。


『ミケくん大好き…!!』


なにこれ、これがツンデレ?ツンデレなの!?私ツンデレってやつに弱いのかな!?ミケくんが半端なく可愛く見えてきた。
いいなーミケくん。私、家買ったらミケくんみたいなペット飼おう!あれ?でもそれってこんくらいの敷地持ってないと辛いんじゃないのかな?
……クロロさん辺り、これくらいの敷地持ってるかな。


「ここから路なりに行けば、執事室に着くはずだよ。」

『へ?屋敷は…?』

「私も行ったことないんだよ。」



どういう事だ。いや、なんてこった。
ゴトーさんはどこに居るんだ。それより私はイルミさんに会うのは何時になっちゃうの。何ヶ月もかかっちゃいそうなんだけど。


『…ゴトーさんってどこにいらっしゃいますか…?』

「執事室だよ。」


わからないって言われる覚悟で聞いてみたけど、その質問は簡単に返ってきた。よし、路なりに行けば執事室なんだから頑張ろう。


『色々とありがとうございました!また会いましょうね!!』

「ルカちゃんみたいな子なら何時でも大歓迎だよ。」

『また来ます!』


ぺこりと頭を下げて、足に力を入れ地を蹴る。流れるような視界。後ろからミケくんが付いて来る気配がなくなって寂しいけど、また会いに行けばいいんだ。でもミケくんは本当にいい子だなぁ…。それに私が抱きしめても全然苦しがっていなかった。だから動物に触れたなんて本当に久しぶりだ。
そんな事を思いながらニヤニヤしていれば、女の子が立っているのが見えて立ち止まる。


『こんにちは。…えっと…ゴトーさん、ですか…?』

「私は執事見習いよ。あなたは?」

『あ、ルカです。イルミさんに用がありまして、ここに来ました。』

「…そう。」


スッと退いてくれた女の子に会釈をして通り抜ける。あ、そうだ。


『お名前は何て言うんですか?』

「………カナリアよ。」

『カナリアさん…。ありがとうございます、カナリアさん!』

「え…?」

『だって私をルカって信じてくれて、ありがとうございます。』


ヘラリと笑った私にカナリアさんは目を見開いていたけど、私は笑顔で頭を下げてまた地を蹴る。
なんか、怖いと思ったけど案外私には合ってるかなぁ…。


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