Fairy
□第2章 姫君
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「痛ってーー。何すんだよ!」
「いい加減、ステラ様に敬語使いなさいよ!」
叩かれた頭を押さえたユウを再び叩くルイカ。
「私は気にしませんよ。」
「ほら、見ろよ。ステラもそう言ってるし。」
ステラが言った言葉を聞いて、ユウは得意げに言った。
その時。
コンコン、と窓にノックがかかる。ついでに言っておくが、此処は城の最上階である。
「あ、もしかしたら……」
ステラは カーテンをシャーッ、と横にやり、窓を見る。窓には巨大な黒いドラゴンの顔。よく見るとその頭の上に誰かいる。少女、だろうか…少年のような格好をしているが確かに少女。
「ユージェ、またそんな所から……」
「ユージェ?」
恐らく、少女の事だろう。ステラは窓を開けた。それと同時にユージェが部屋の中へと華麗に着地。
「ヴァン、ご苦労様。」
すると ドラゴンは 三人に同行してきたドラゴンと同じサイズに なり、ユージェの肩に乗った。
「あの、ステラ様 その方は?」
ルイカが尋ねると、ステラではなくその少女が口を開いた。
「ボクは、ユージェ。えぇと……どなた様で?」
「オレはユウ。」
「あたしはルイカ。」
「…俺は、コウだ。」
「なるほど!では宜しくお願いしますね!」
少女はにこりと笑んだ。
「ステラ、大変なんだ。今 近くまで魔物が迫って来てる。」
「「ま、魔物!!?」」
ユウとルイカ、二人して叫んでしまう。
「ユージェ、その場所はどこです?」
「西側の門。今、騎士たちが向かってる。」
つい、叫んでしまった二人とは違い、ステラは慣れたようにユージェに魔物の出現場所を尋ねた。
「どうなると思いますか?」
「む〜…厳しいと思うよ。防御壁もそろそろ限界だと思うし……。」
ユージェとかいう少女、ルイカたちと同じ位の年齢にしてはどこか不思議な空気を纏っている。
「げ、限界…ってどうなちゃうんだよ!?」
ユージェの言葉を受け、動揺するユウ。こんなことになるならば、ルイカたちについて行かずに家で寝ていればよかったと後悔する。
「大丈夫。この国は滅ばない。」
ユージェは肩に乗せた漆黒のドラゴン……ヴァンに 何かのやりとりを済ます。
「取り敢えず、外は危険だからこの部屋にいて。」
ヴァンは 窓から外に出て、最初の時と同じ 大きなドラゴンへと姿を変えた、いや 本来の姿に戻ったというべきか。
「じゃあ、行ってくる。帰らなかったら……その時は宜しくね」
ユージェは悲しそうな顔をすると ヴァンの背中に乗った。
「こうしちゃいられないわ!行くわよ、二人共!!」
ルイカは 近くにあった、ダガーナイフを手に 扉に手をかけた。
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