Fairy

□第1章 妖精
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そんな世界にある、大陸 【サファイス】。

王都から何千里も離れた、小さな小さな 村……。

小さな村【ドゥカ】――


この村の近くには 魔物の巣窟があり 大変危険なので近寄ってはならない事になっている。


とくに、子供達は……。


とくに、子供達は村から出ることを禁じられていた。
魔物にとって子供達は恰好の獲物、丁度いい餌だったから。


その他の村人も極力村から出ないようにしていた。理由は同じ、魔物に喰われるから。


そんな村から出る唯一の方法…それは、馬車を使うこと。

「痛ッ!…もう少しつめてよ!」

小声で横にいる少年に 話し掛けるのは 大体 13・4あたりの少女。
頭についた 白色の羽飾りに、橙色の長髪。活気溢れる 翡翠の瞳をしていた。

ガタゴトと揺れる馬車の荷台の後ろに隠れているのは、3人…と一匹。

一人は羽飾りをつけた、活気溢れんばかりの瞳をした少女。

一人はやる気がないのか、あるのか。少女と違い 面倒そうに 欠伸をする 青髪の少年。

そしてもう一人は、明らかに他の皆とは違うオーラを放っている。
その一人は、琥珀の短髪に 漆黒の瞳。肩には小さなドラゴン…と見えるものが乗っている。

「うっせェなぁ…これ以上つめらんねぇっつーの。」

青髪の少年が、面倒そうに少女の対処を済ます。

「静かにしてくれないか…見つかってしまう。」

青髪の少年の言葉で、今にも言い争いになってしまいそうな少年と少女を静かな声音で制したのは琥珀色の髪をした少年だった。

「ごめんなさい、気をつけるわ。」

謝ったのは、少女のほう。しかし、青髪の少年と目を合わせるなり、そっぽを向いてしまった。


馬車の二台に隠れて、少女達の住んでいる村から出て数時間が経とうとしていた。
そろそろ少女達の忍耐が切れようとしていた。


と、その時。
揺れが止まった。

つまり、馬車が止まったという訳だ。

馬を引いていた男性が馬車から降り、何処かへと去っていった。恐らく 荷物かなにかを取りに行くのだろう。

荷台から顔を覗かせ、外を見てみる。……目の前にあるのは 大きな街。人々で賑わい、商店街と思わしき所はまるで 魚の群れのようだ。

「す、すっごーい!ほら、見てごらんなさいよ!!」

嬉しそうにはしゃぐ少女は、目を輝かせ商店街を指差した。

「だから、うっせェ。少しは黙れよ。ったく、女という名のカケラもないな。」

「なっ…何よ!アンタなんか、ただの寝てばっかのバカじゃない!!」

少女は商店街から、青髪の少年の方へと目を移し 怒鳴ってやった。

「もう少しじゃ。もう少しで、王都【グランディア】に着く。」

今まで黙って琥珀髪の少年の肩に乗っていたドラゴンが口を開いた。
見た目にそぐわない、威厳のアル声音で話している。

「しばらくすれば、御者の男も帰ってくる。」

「―…っ、分かった。」

琥珀髪の少年の目配せに、青髪の少年は面倒臭そうに髪をかき荷台の奥のほうへと移動する。

「ほれ、そなたも隠れるぞ。」

「はーい……。」

少女はドラゴンに呼ばれたため、仕方なく、名残惜しそうに眺めていた街の様子から目を離し奥へといった。


数分後、御者は荷物を持って再び馬車に戻ってきた。
荷物を積み終わると、目的地である王都【グランディア】へと馬車を走らせた。



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