紅の書庫

□1か2を選ぶだけの単純な
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「例えば、仲がよかった男女がその想いを愛だと自覚するにはどんなきっかけが必要なんだと思う?」

唐突な兄の問いかけに、読み途中の本から目を逸らさずに明日香は答える。

「色んなものがきっかけとなり得るでしょうけど、結局は自分の選択なんだと思うわ」

友情なんだと思い込むのも、愛なんだと思い改めるのも。
そして明日香は視線を本から外して、右斜め前のソファにクッションを抱いて座る吹雪を見つめた。

「でも、兄さんの答えはもう出ているんでしょう?」

そんなことを言い始めた時点で、もう愛だと自覚していることを告白しているのと一緒。
兄が戸惑っているのは、選択肢が二つあると相手に自覚をさせること。

「十代は半端なく鈍感だから」

大変ね。

慰めたつもりの言葉は以外に冷めた物言いになっていて、
はぁ、と頼りないため息をつく兄に、
いつまでも躊躇っているなら私がもらっちゃうんだからと宣言してしまったのはきっと、
私も愛という選択をしたからだと思った。






end

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