紅の書庫

□星空の下
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ここに来るまで、こんな綺麗な星空見たことが無かった。
少し肌寒くなった風に吹かれながら、そっと夜空に手を伸ばす。
星を捕まえたいとか思ったわけではなくて、
ただ、この広い空に浸しているような感覚が欲しかったのかもしれない。
思い切り空へと伸ばしていた両手が、不意に捕らえられた。
そうして上から覗き込んできたのは、この星空のように綺麗な人。

「寒くないかい?」

その大きな手は俺の冷えた両手を包み込み、胸のほうへと降りていく。

「手、冷えちゃってるね」

そしてそのまま冷たい風から守るように後ろから抱きしめられて、じわじわと広がっていくる温もりが心地よかった。
甘えるように自分からも体を摺り寄せると、上でくすっと笑われた。

「十代君、猫みたい」

「猫?」

自分を動物に置き換えるなら犬じゃないのかなと思ったので疑問で返すと、
いつもはあんまり甘えてくれないだろう?と寂しそうに言われて、困った。
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