紅の書庫

□融合
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今、君とこうして居られるのは紛れも無い事実だというのに。




「吹雪さん?」

突然握り締めたくなった、その手。
寂しかったからとか、こっちを見て欲しかったからとかそんな理由じゃなくて、
ただ・・・・なんとなく。
問いかけるように名を呼ばれたというのに、言葉を返すことが出来ない。
そんな僕を心配そうに十代が見つめる。

「どうしたんだ?」

まさか気分でも悪くなったのかと聞いてきたので、
そうじゃないよ、と静かに返した。

「じゃあ・・・なんでそんな・・・・」

辛そうなんだ?

辛い。
その単語がやけに深く僕の中に沈んだ。
僕は、辛いのか。
適度に抑えきれないこの感情が。
どうしたって溶け合えない二つの心を、どうしても融けあえたらと思ってしまうこの心が。
側にいてくれる幸福と、側にいない孤独という不幸と・・・・。
幸福な時ばかりが欲しい。
でも、それは必ず不幸を伴う。
一人は嫌だ。
側から離れないで。
どんな時も僕の側に居て欲しいのに。

僕のこの願いが叶うために、この世界はあまりにも個を個として存在させすぎている。
だからこそ見ず知らずの他人に興味を持ち、愛し始めるのだということも知っていても尚、
僕はそれが苦しくて苦しくて堪らない。

一つになって、もう僕のことしか考えられないように。
もう君のことしか考えられないように。
全て僕のものになって。
全て君のものになるから。
握り締めていた手を後ろに引き、座っていたベッドに押し倒す。
シーツの白に沈む十代の体に跨り、両手を拘束した。
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