紅の書庫

□偶然にも訪れたもの
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「・・・・結構、寒いし・・・」

これは風邪引き決定かもと、誰も見当たらない場所で自嘲気味に呟いてみる。
たかが知れているけれど、両腕で体を抱くようにし、体温をこれ以上持っていかれないように丸まってみた。
あったかい湯船にじゃぽんって入って、冷たくなった体を暖めなきゃ・・・・。
雨が弱まった後の行動のスケジュールを立てて気を紛らわせてみたりして、それでもやっぱり寒くて堪らない。

「傘・・・持ってくれば良かった・・・・・」

予報を聞いていたくせに、どうせたいしたことないだろうと高をくくっていた結果がこれだ。
朝そう思ってしまった自分に腹が立つ。

「今度から置き傘をしておくといいよ」

俯いて時が来るのを待っていた十代の肩に、突然オベリスクの生徒が着ている上着が掛けられ
驚いて見上げると、その上着の主である吹雪が黒い傘を差していた。

「そうすればこんな時に使える。」

僕のようにね。
手を差し出され、傘の中へと引き込まれた。
掛けられた上着は安心する温もりを十代に与えてくれる、けれど
十代の衣服はずぶ濡れで、このままでは吹雪の上着も濡れてしまう。
そう思って上着に手を掛け吹雪に返そうとするがやんわりと止められてしまった。
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