紅の書庫

□融合
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「ふ、ぶきさ・・・・」

驚かせてしまったね。
でも・・・・・。
弁解するでもなく、僕は十代の首筋に顔を近づけていく。

「っ・・・・!」

唇で辿る大動脈。
何をされるのかという恐怖からだろうか、脈は速く刻んでいる。
そこを通り抜けて、生を送り出す左胸に耳を当てる。
僕が求めてやまない存在が在る証。
それを手にして尚、何故こんなにも一人という輪郭がはっきりしていくのだろう。
まるで、一人夢の中にいるみたいに。

「・・・吹雪さん・・・・・・」

そっと名を呼ばれ、見上げる表情はどんなに醜いものだったのか。
それでも、十代はあの琥珀の目で真正面から見つめてくれる。

「・・・怖いのか?」

その意思の強さが読み取れる瞳にどれだけ惹かれているか。
好きだ・・・・・。
好きすぎて捕らえたくて、閉じ込めたくて融けあいたくて。

「俺が吹雪さんから離れていくかもしれないって・・・」

そうだ。
僕は怖くて堪らない。
君にとって一番近い場所に居ることができる今の幸福と
その場所が違う誰かに取って代わられるのではないかという未来への不安が強すぎて。

「俺は、絶対吹雪さんから離れないよ」

言葉というのは一瞬で空気に溶けていく儚いもの。
だとしても、想いを正確に伝えるのは言葉の力が必要で、
だから、簡単な単語を羅列することしか出来ないけれど、
俺はこうやって伝える。

絶対なんて無い。
未来は誰にも分からない。
例えそう言われたとしても。
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