通りゃんせ夜話 〜創作戦国〜
□とおりゃんせ夜話 08
2ページ/8ページ
上弦の月。
夕方に昇ってくるこの月を、こんなにどきどきしながら見たのは初めてだ。
「今日は、紀之助さんがお友達と会わせてくれるんだ!」
昨日先輩に一通り聞いてもらって(かなり誤魔化しながらだったけど)、
少しだけ落ち着いた私は、楽しいことだけ考えるようにした。
あんなにぐちゃぐちゃ悩むんだったら、今日逢ってから考えるのだって遅くない、と思ったのだ。
――それに実は…他の戦国大名とも話が出来る、というのにとっっても惹かれてる……
だってほら、石田三成とか、加藤清正とか、小西行長とか!
そんな人と話が出来ちゃうんだよ!?
もんのすごいメンツですよ。街中で芸能人に遭遇するより遥かにすごい。
ミーハーと言うなかれ、この好奇心を抑えるのは私には無理だ!
それにほら、行長さんとから何か紀之助さんのこと聞けるかもしれないしね!
――ああ、私って結構たくましいのかしら……。
戦国大名の輪に、障子越しとはいえ混ざろうだなんて。
紀之助さんの友達だもの、きっといい人達だと思うな。
よし、今日は楽しもう!
そう決心するといつものようにマグカップを握り締め、『とおりゃんせ』を唄い始める。
「ここは何処の細道じゃ 天神様の細道じゃ…」
するといつものようにぼうっと壁が霞み……
「ちいっと通してくだしゃんせ 御用の無い者通しゃせぬ…」
「……って…」
「…おい……」
あら?話し声?