通りゃんせ夜話 〜創作戦国〜

□とおりゃんせ夜話 08
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上弦の月。




夕方に昇ってくるこの月を、こんなにどきどきしながら見たのは初めてだ。




「今日は、紀之助さんがお友達と会わせてくれるんだ!」




昨日先輩に一通り聞いてもらって(かなり誤魔化しながらだったけど)、


少しだけ落ち着いた私は、楽しいことだけ考えるようにした。



あんなにぐちゃぐちゃ悩むんだったら、今日逢ってから考えるのだって遅くない、と思ったのだ。





――それに実は…他の戦国大名とも話が出来る、というのにとっっても惹かれてる……





だってほら、石田三成とか、加藤清正とか、小西行長とか!


そんな人と話が出来ちゃうんだよ!?



もんのすごいメンツですよ。街中で芸能人に遭遇するより遥かにすごい。



ミーハーと言うなかれ、この好奇心を抑えるのは私には無理だ!



それにほら、行長さんとから何か紀之助さんのこと聞けるかもしれないしね!





――ああ、私って結構たくましいのかしら……。





戦国大名の輪に、障子越しとはいえ混ざろうだなんて。


紀之助さんの友達だもの、きっといい人達だと思うな。






よし、今日は楽しもう!






そう決心するといつものようにマグカップを握り締め、『とおりゃんせ』を唄い始める。





「ここは何処の細道じゃ 天神様の細道じゃ…」




するといつものようにぼうっと壁が霞み……




「ちいっと通してくだしゃんせ 御用の無い者通しゃせぬ…」



「……って…」



「…おい……」




あら?話し声?



 
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