通りゃんせ夜話 〜創作戦国〜
□とおりゃんせ夜話 03
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「殿、最近お顔の色がよろしいようですね」
五助は主の背に向かって声をかけた。
「そうか?」
紀之助は文机に向かい、なめらかに筆を進めている。
「はい、それに何だか楽しそうです」
「…そうか、ふふっ」
と、優しい笑顔を見せるものだから、五助は少し嬉しくなった。
死病を得、半島にてその病状が悪化してからと言うもの、
どうにも塞ぎがちだった主の久々の良い顔である。
「何か良いことがあられたのですね?」
「うん、そうだな…」
紀之助はちらりと自室の障子を見やった。
「可愛い物の怪に、会ったのだよ」
「………物の怪、ですか?」
通りゃんせ夜話 03