陰陽のディーオ

□9章 「僕の部屋じゃないけど」
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「・・・まぁ、異文化?は、異文化・・・なのか・・・?」
「文化だけの問題ではないと思いますけど・・・」

自分を納得させようと努力するギルの横で、朔弥も考え込んでしまうことになった。

「?・・・では、片付けますね」
「あぁ、ありがとう。お願いね。」
「はい。よいっしょっと」

そんな二人を気にすることなく、少女は積み重ねた食器類を、両手で持ち上げる。

「あ、なんかすんません。お願いするっす!」
「では・・・失礼しました」

持ち上げた皿を、廊下に置いてあったらしいカートに乗せると、一礼して退室した。カートの下段に、本来それに乗るはずはないものが、まるで人のようなものが見えた気がしたが、ギルは「異文化交流、異文化交流」と呪文を唱え、気のせいにした。

「じゃあ、俺達も部屋に戻るか?て、アックスの部屋だけど」

何事もなかったかのように、先のアックスの発言をまねして、アレスが提案する。

「そーだなー僕の部屋に戻ろう!」
「そうねー行きましょ」
「そうだな。行くか」

アックス、フォルテ、ラーグもそれぞれ賛同し、ドアに向かう。
「はい!」
「じゃあ、朔弥、またね。」

ギルとレイも、それに続く。

「はい。・・・・・・リゼルさんは、遅くなるのでしょうか・・・?」

一人部屋に残される朔弥は、不安げだった。

「分からん。・・・・・・でも、連絡はしといてやるから、安心しろ」
「安心しろっなんて、カッコイー!・・・あ、ごめんなさい」
「あ・・・ありがとうございます、ラーグさん」

ラーグの不器用な優しさに、朔弥は知り合いを思い出して、安堵と懐かしさから、柔らかい笑みをこぼした。この世界に迷い込んで初めて見せる、女の子らしい表情だった。

「え・・・・・・朔弥?」
「どうした?」
「・・・・・・いや、朔弥も、女の子なんだなー・・・うん」
「え・・・?うん、そうだけど」
「何言ってんだよ、あんたは」
「いてっ」

レイにはたかれたギルが頭を押さえている間に、ラーグは少し輪から外れ、小さな何かの装置を手にし、それと向き合っていた。

「・・・・・・」
「・・・なに・・・?」

しばらくすると、その装置から、疲れた様子のリゼルの声が聞こえてくる。装置には、リゼルの姿も映っているようだった。

「・・・今、どこだ?」
「へぇ?あ、もう戻るから・・・」
「なぜ、そんなに疲れてるんだ?あと、ハチマキが変に・・・」
「・・・すぐ戻るから!気にしないでね!うん!あーうんじゃ!」
「切れた・・・大丈夫か・・・こいつ」

 通信は一方的に切られたようで、ラーグは気分を害したように見えたが、その声には呆れと心配の色が感じられた。

「どうしたの?」

ラーグのそんな様子に、会話のすべてが聞こえていたわけではないフォルテが、声をかける。

「いや、なんでもない。おい、リゼルはもう少ししたら戻るだと」
「わかりました。ありがとうございます」
「んじゃー戻ろーう!」

アックスの声で、今度こそ、6人は主の居ない、リゼルの部屋を出た。



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