陰陽のディーオ

□9章 「僕の部屋じゃないけど」
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「そっすよねー」

(ラーグさん、みんなといる時は結構しゃべるんだなぁ・・・。やっぱ、オレ嫌われてんのか?いやでも、リゼルさんはああいう人だから気にするなって言ってたし・・・)

「話題探し、苦手なのよねー。気にしない方がいいよ」
「え!?」

 いつの間にかそばに来ていたフォルテにまるで心の内を読んだかのようなことを言われて、ギルは驚愕する。

「あれ?なにかちがった?ラーグにきらわれてるとかどーとか・・・」
「・・・・・・みなさん、苦労されたんすね」

その、あまりにも慣れた反応に、ギルは彼らの苦労を察した。

「まぁね・・・。昔のアタシよりはマシな方だし・・・」

(昔、何があったんだろう・・・?聞かない方がよさそうだな、うん)

「そうなんすか、ありがとうございます」
「どういたしましてー」

 賢明な判断を下したギルは、彼女の壮絶な昔話を知らずに済んだ。

「部屋に戻るか?」
「リゼルはその内帰ってくるだろーし。戻るー?」

 ラーグの提案にアックスが賛同するが、アレスが待ったをかける。

「悪いけど、4人そろってるうちに、少し明日のことを教えてもらえないか?こっちからも、話しておきたいこともあるし・・・」
「えっとー、明日明日明日・・・・どーすんだ?」
「あ?とりあえず、他の奴らにあいさつ、だろ」

首を傾げるアックスに、ラーグはもはや疲れた様子で代わりに答えた。

「じゃあ、そこで、改めて自己紹介させてもらえばいいかしらね」
「そうだな」
「アデレイドはあれだろ!精霊使いってヤツだろ!」

レイとアレスが確認していると、アックスがまた、元気よく声を上げる。

「え?あぁ、そうだよ。幽霊は見えるけど操れないから」
「へぇー。大丈夫!間違えないぞ!コトハから聞いたんだ!」
「それはよかった。・・・とりあえず、コトハさんて人にお礼言わないとね。フォルテ、明日教えてくれる?」
「はーい。了解」

 食事の前の会話で、誤解を解くのになかなかの時間がかかるかもしれないと心配していたアックスの「勘違い」が、いつの間にか解かれていたようで、レイは驚き、安堵した。

「うんじゃ、部屋戻るぜー!」
「・・・・・・それはいいとして、この皿はどうするか・・・」
「私が片付けておきますよ」

踵を返すアックスの横でラーグが片付けの心配をしたが、思わぬところから返答がある。

「・・・うわっ!」

驚くラーグの後ろには、開いたままだったドアから入って来たのだろう、一人の少女がいた。気配には敏感なつもりだったが、部屋に入る直前まで彼女に気付かなかったことに、朔弥は少し、動揺していた。

「あ・・・ありがとうございます、わざわざ・・・」
「いえ・・・ちょうど、気絶しているマスターを部屋に運んでいたので・・・。気にしなくていいですよ」
「・・・・・・きぜつ・・・?」
「気絶させた、の・・・間違えじゃないのか?」
「その通りですが・・・?」
「やっぱりな・・・」

 まだ幼い少女の口から発せられた不穏な言葉に、ギルが疑問符を浮かべるが、ラーグによりより穏やかでない注釈が加えられ、少女がそれを否定することもなかった。

「え?あの、どういう・・・」
「いつもの事だからーって、そっかー。初めてだもんなーでも気にすんなー」
「ちょっ・・・気にするなって言われても気になるんすけど・・・?!」
「ギル、気にするな」
「アレス君もっすか!?」
「気にしたら負けだぞ?異文化に触れて触れているんだ。自分にとっての常識は役に立たないと思え」

アックスの横でそう言うアレスは、悪乗りなのか先輩のアドバイスなのか、判断に迷う顔をしていた。

「・・・まぁ、異文化?は、異文化・・・なのか・・・?」
「文化だけの問題ではないと思いますけど・・・」

自分を納得させようと努力するギルの横で、朔弥も考え込んでしまうことになった。


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