陰陽のディーオ

□8章 食事の時間に
2ページ/11ページ





コトハ視点


拙者はコトハ・クレナイと申す。アークフォルドで働いてる者でござるよ。拙者とレヴェリー殿は先程、客人に夕食を運びに行ったでござる。
しかし、レヴェリー殿の「あれ」のせいで、色々と騒がせてしまったのは……いけなかったでござる。
こちらも止めるのが、大変だった…。
しかも、亜麻色髪の者に栄養ドリンクを頂いてしまい、自分も迷惑をかけてしまったのでは、と思ってしまうわけで…。
駄目でござる。
とりあえず、食堂に戻り夕食を取ろうとしていると…

「ん? あれ、コトハ」

その声に聞き覚えが――いや、それは間違いでござるな。
同じ建物にいる仲間の声をそう言うのは。
声のした方に振り返る。そこには声の主のリゼル殿と、いつもの三人が座っていた。
今から、夕食らしい。拙者と一緒でござるな。
 
「あぁ、リゼル殿」
「あれ、レヴェリーさんと一緒じゃないんだ。今から夕食なら、一緒にどう? 後、すっごく疲れてるね」

どうやら、疲れているのが顔に出ていたらしい。誘われたので、一緒に食べる事にしたでござる。
それに、話を聞いてほしかったので。空いている席に座り、話し出す。

「レヴェリー殿は、テナン殿の手伝いに。夕食は、もう食べたらしく……それより、聞いてほしいでござるよ!」
「…どうしたんだ、声を張り上げて」

ラ―グ殿が眉間に皺を寄せ拙者を見ていた。
どうやら、最後の言葉を言う声が大きかったようだ。うるさかったのだろう。
だから彼に「すまぬ」と謝る。しかし、ラ―グ殿は「気にしてないから、言ってみろ」と言う。どうやら、本当に声の事は気にしてないようだ。
ただ、驚いただけだろう。
ラ―グ殿は優しいのだが、それを表情や言葉にあまり出さない。
だから、怒っていると勘違いされるのではないのか……自分がそんな事思っても余計なお世話な気がするが……

「実は、レヴェリー殿が客人に……あれを……ナイフを自分に向けて……」

そう、拙者が疲れていた理由はこれだ。レヴェリー殿は依坐になったせいで家を追い出されたのでござる。
そのせいか、かなりネガティブな思考になってしまったのでござるよ。何でも自分のせいだと思ってしまう。
例えば、自分はなにもしてないのに人が怪我をした時、すぐ自分のせいだと思い「私のせいで……すいません、今すぐ、死にます!」と言いナイフを取り出す始末。
ナイフは護身用で持っている為、どうしようもないのでござる。毎回、未遂で済んでいるでござるが。
拙者も似たような境遇なので、分かるでござるが……あまりにもネガティブすぎるのは困るでござる。
自分は依坐になる前から、嫌われていたでござるからなぁ。
髪色、そして一番忌み嫌われているのは、性別不詳。女でも男でもない、それが拙者でござる。
あまり、気にしてないでござるが……変でござるよね。

「ありゃー、あれは初めて見た人は、ビックリするわよね。はは」

……確かに。でも、レヴェリー殿はそこを除けばいい人なのだ。
優しいお姉ちゃん的存在だ。
親友である拙者が言うのだから、間違いない。

「一番慌てていた青髪の者でござった。後の二人…赤髪の者は苦笑いで、亜麻色髪の者は拙者の心配をしていたでござるよ。その時、何故か栄養ドリンクを貰ったでござる。心配されるとは、拙者、自分が情けないでござる…」

ネガティブな事を言ってしまったでござる。
駄目でござるな!

「サクヤっていつも栄養ドリンク持ってるの? ギルバートはらしいよな!」
「アックスも似たようなものだよ?」
「ん?」

アックス殿は首を傾げ、リゼル殿を見る。少年のような――いや、アックス殿はどちらかというと、可愛らしい方でござるな。
そうされると、本当に可愛く見えてしまう。リゼル殿はそんな彼を見て、少し慌てていた。
とりあえず、今聞いた名前を纏めると――

「青髪の者はギルバート殿、栄養ドリンクをくれた亜麻色髪の者はサクヤ殿。…赤髪の者は…?」
「アレスさんの事だね」
「アレス殿でござるか。不思議は客人でござった。……もう一人は見られなかったでござるが…」

客人は四人と聞いていたでござる。
しかし、食事を持っていった時は、三人しかいなかったでござるな。

「それは、アデレイドね」
「そうでござるか、アデレイドど――」
「コトハ、聞いてくれよ! アデレイドな幽霊飼ってるんだぜ! すげぇーよな!」

言葉を遮り、アックス殿は話をしてきたでござる。相変わらずでござるな。
ラ―グ殿がうるさそうな顔しておるよ。
しかし、アデレイド殿が幽霊を飼っている?
死霊使い……ネクロマンサーという者でござるか?拙者はシャーマンの血筋でござるが……
そういえば、先程森に何かいたような気がしたが……人間ではなく、違うモノが……
でも、あれは、幽霊というよりも精霊のような……

「アックス殿、誰からどんな説明を聞いたのでござるか?」
「んー? アレスから聞いた! なんか、自然界にいる化身でいつもいるけど、僕らには見えないんだって。アデレイドはそんなのと意思疎通できるんだ! すげーだろ」

う、うーん。精霊というものでござるな。
精霊も死人の魂がどうとかうんぬん、と祖母が言っていたような気が……気にしないでおこう。
けれど、アレス殿、本当にどういう説明を……例えた、とか?そんな事は……ないだろう。多分。
ここは、正しく言っておこう。

「アックス殿、それは幽霊じゃなくて精霊でござるよ」
「?」

あぁ、分からないでござるね……そうかもしれないが、もう、疲れたでござる。

「……本人に聞くでござるよ」

アデレイド殿、スマヌ。







次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ