陰陽のディーオ
□7章 それぞれの部屋で
2ページ/11ページ
アレス視点
「次はアックスかな、うん」
リゼルさんの先導で階段を上っていくと、一つのドアの前に着いた。
当然の気遣いだが、男女で部屋を置く階は変えてあるみたいだ。
「おー、アレスどーぞー。そこの椅子にでも座って」
「それじゃ、遠慮なく。」
先に部屋に飛び込むように入ったアックスが、迎え入れてソファを勧めてくれた。
遠慮なく座ると、アックスも向かいのソファに腰掛けて、向かい合う。
笑顔でこっちを見てくるのは別にいいんだが、俺はどうすればいいのかな?
話のネタがないなら、自分から話を振ることだってできる。
自慢じゃないけど、人との関わりの経験値は多い方だ。
でも、今のアックスは、話すことがなくて困っているようには見えないんだよな。
言葉を待つ意味もあって、なんとなく部屋を見回す。
職業柄、未知の空間に来たときには、その場の状況を把握しておきたいという気持ちもあるから、意味のない行動じゃあない。
意外に片づいている部屋に感心したのは、本人には黙っておこう。
「なんか、名前似てるよな!」
・・・ん?
唐突に話出したのは、別にかまわない。
想定の範囲だったし。
でも・・・
「・・・そうだな。」
思いがけない内容で、少し驚きながらアックスに目を向ける。
「てか、なんかすげーなつかしい感じする」
「・・・そうか?」
どういう意図があって言い出したことかはわからないけど、本人もよくわかってないみたいだ。
そんなところもアックスらしい。
思わず返事をしながら笑ってしまった。
「なんか、なんかだから!気にしないでくれ」
「そうか。・・・てか、なんかってなんだよ。」
アックスは、周りにはいなかったタイプだな。
言葉遮られたり、よくわからない主張されたり、勝手に判断して行動されたり。
怒りたくなるような対応もあったと思うけど、何故か憎めないというのか。
アックスの人柄というか雰囲気というか、そういうもののせいだろう。
「なんか、同士に会ったみたいな?そんな感じ。あんま、うまく言えないんだよなぁ。言葉にしたくても、説明が難しいんだよぉ・・・うーん」
真剣に悩み始めるアックスは、自分の中に眠るものにまだ気づいていないのか。
あるいは、俺の本性を、本能では感じていても、正確にはわかっていないのか。
両方、かな。
本能のままに発言してそうだし。
少なくとも今は。
悩み出すと周りが見えなくなるのか、言葉が少なくなるアックスを、しばらくは観察させてもらおう。
百面相をするアックスは、失礼かもしれないけど面白い。
見ていて飽きないっていうのは、こういうことを言うのかもな
.