陰陽のディーオ

□7章 それぞれの部屋で
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アレス視点


「次はアックスかな、うん」

リゼルさんの先導で階段を上っていくと、一つのドアの前に着いた。
当然の気遣いだが、男女で部屋を置く階は変えてあるみたいだ。

「おー、アレスどーぞー。そこの椅子にでも座って」
「それじゃ、遠慮なく。」

先に部屋に飛び込むように入ったアックスが、迎え入れてソファを勧めてくれた。
遠慮なく座ると、アックスも向かいのソファに腰掛けて、向かい合う。

笑顔でこっちを見てくるのは別にいいんだが、俺はどうすればいいのかな?

話のネタがないなら、自分から話を振ることだってできる。
自慢じゃないけど、人との関わりの経験値は多い方だ。
でも、今のアックスは、話すことがなくて困っているようには見えないんだよな。
言葉を待つ意味もあって、なんとなく部屋を見回す。

職業柄、未知の空間に来たときには、その場の状況を把握しておきたいという気持ちもあるから、意味のない行動じゃあない。

意外に片づいている部屋に感心したのは、本人には黙っておこう。

「なんか、名前似てるよな!」

・・・ん?
唐突に話出したのは、別にかまわない。
想定の範囲だったし。
でも・・・

「・・・そうだな。」

思いがけない内容で、少し驚きながらアックスに目を向ける。

「てか、なんかすげーなつかしい感じする」
「・・・そうか?」

どういう意図があって言い出したことかはわからないけど、本人もよくわかってないみたいだ。
そんなところもアックスらしい。
思わず返事をしながら笑ってしまった。

「なんか、なんかだから!気にしないでくれ」
「そうか。・・・てか、なんかってなんだよ。」

アックスは、周りにはいなかったタイプだな。
言葉遮られたり、よくわからない主張されたり、勝手に判断して行動されたり。
怒りたくなるような対応もあったと思うけど、何故か憎めないというのか。
アックスの人柄というか雰囲気というか、そういうもののせいだろう。

「なんか、同士に会ったみたいな?そんな感じ。あんま、うまく言えないんだよなぁ。言葉にしたくても、説明が難しいんだよぉ・・・うーん」

真剣に悩み始めるアックスは、自分の中に眠るものにまだ気づいていないのか。
あるいは、俺の本性を、本能では感じていても、正確にはわかっていないのか。

両方、かな。
本能のままに発言してそうだし。
少なくとも今は。

悩み出すと周りが見えなくなるのか、言葉が少なくなるアックスを、しばらくは観察させてもらおう。

百面相をするアックスは、失礼かもしれないけど面白い。
見ていて飽きないっていうのは、こういうことを言うのかもな


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