陰陽のディーオ

□3章 未知の世界へ
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アレスは自分の翻訳器である赤いラインの入った黒金の腕輪にもその光の一つが入っていくことを見届け、塔との通信に意識を戻す。

「リア島という地名から、世界を特定できますか?」
『やってみます。・・・・・・ダメです。任務先として登録してある世界の中にはありません。』
「それでは、駐在員もいないんですね。」
『そうなります。』
「でも、転移装置で来れたということは、過去に魔界の住人の誰かが訪れたことのある世界・・・ではあるはずでしたよね?」
『はい。すみません、もう少し範囲を広げて捜してみます。』
「お願いします。」

 突然の事態に、一応この隊の責任者として、できるだけ冷静に対処したつもりだが、アレスの内心は穏やかではなかった。
転移装置の不具合など、なかなかあることではない。そもそも、転移装置を使う任務の絶対数が多くはないのではあるが。
アレスの指示通り精霊を操るレイも、従順に周囲への警戒を続ける二人も、表には出さないが不安や焦りがあるだろう。
リーダーが崩れれば、その集団はいともたやすく崩れてしまう。逆に、どんな緊急事態が起きても、信頼されるリーダーが冷静ならば、意外と何とかなるものだ。
過去の経験からそれを実感していたアレスは、今回は自分がそのリーダーという立場であることに緊張は感じつつ、努めて冷静に振舞っていた。

『どうした?』

女性の報告を待っていたアレスの耳に、どこか聞きなれた男性の声が聞こえた。

『玖珂殿・・・それが、異空間転移装置に不具合が生じたようでして・・・』
「師匠?」

信頼する上官の声に、知らずこわばっていた頬が緩む。

『この声はアレス様か。隊員にけがはないか。』
「はい、大丈夫です。」

真っ先にこちらの無事を確認してくれた彼に嬉しく思いつつ、しっかりと問いに答える。

『現地の言語は?』
「取得済みです。」
『ならいい。・・・不具合があったとはいえ、装置に送られた場所なら、一度は魔界の住人が訪れたことのある場所のはずだ。場所の特定は?』
「現在探索中です。」

アレスの記憶は間違えではなかったようで、少し安心する。

「師匠、リア島という地名はご存知ないですか。」
『リア島・・・・・・』
「・・・あの!」


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