陰陽のディーオ

□2章 アックスお使いに行く
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「うわぁぁぁあ――!」

 アックスは目を丸くし、テーブルの上に並んでいるお菓子を見た。様々な物がある。マカロンやらケーキ系がある。本人も、まさかこんなにも出るとか思わなかったので、叫びに似た言葉を発す。

「どうぞ、召し上がって下さい。どれも美味しいですから」
「う、うん。じゃ、いただきまーす」

 どれを最初にするか悩んだが、とりあえず近くにあったケーキを、一口食べる。

「う、うめ――――! じゃなかった……この場合は確か……と、とても、オイシイデス」

 普段使わない敬語を使ったため、片言になる。しかも、声が裏返ってしまい、アックスは顔を赤くした。
 そんな彼を眺め、アザレアは面白そうに笑う。それにますます、アックスはその顔を真っ赤にする。

「いいですよ。普通で大丈夫です」
「そ、そうか? でも、これ、ホントにおいしいな!作ったヤツすげぇ!」
「そう言ってもらえますと、パティシエ達も喜ぶでしょう」

 サレリアスは嬉しそうに言う。アザレアの空になったカップに紅茶を注ぐ。

「でも、見たことないのもあるなぁ。ケーキとかクッキーとかはよく、作ってもらうんだけど」
「アークフォルドには、パティシエがいらっしゃるのですか?」
「パ、ティ……しえ? ううん、そういうのはいない。仲間が作ってくれる」
「仲間……テナンさんが作るのですか?」
「ううん。フォルテとか、ハルートとか――たまにリゼルが作ってくれる。みんな、仲間だよ!」
「たくさん、いらっしゃるのですね」
「うん。たくさんいるぜ」

 アックスが元気よく頷き、アザレアは笑みを浮かべる。サレリアスは思い出したように、アザレアに耳打ちする。そうすると、アザレアもハッとしアックスを見る。

「アックスさん。魔法薬なのですが……」
「……そうだった! ケーキに夢中になってた。えっと、これが魔法薬で……この紙は魔法薬のリストかな」

 アックスはフォークを皿に置くと、イスに掛けてあった鞄から袋を取り出すと、サレリアスに渡す。彼はそれを受け取ると、アザレアの元に持っていき、彼女と共に一緒に確認をする。
 全部あるのを確認すると、サレリアスは扉の近くにいたメイドに渡す。メイドは一礼すると、部屋から出て行った。それをアックスは見届ける。

「それから、お金なんだけど……」
「こちらになります」

 アックスはサレリアスから封筒を受け取る。軽く中身を確認すると、鞄にしまう。それを見て、アザレアは驚く。

「ちゃんと、確認しないのですか?」
「うん。だって、ちゃんとあると思うし。テナンさんも信用してる相手みたいな感じだったし」

 アックスはそう言うと、ケーキを口に含み咀嚼する。アザレアとサレリアスは目を丸くするが、すぐに笑みを浮かべた。
 そんなアザレアを、ケーキを頬張りながら、見た。そう、アックスは思っていた。
 アザレアの髪の色、そして髪についている色が違うが、形が似ている二つのピンを自分は見た事があると。しかもそれは、すぐ近くに。考えてすぐにその答えが見つかる。その人物に当たった途端、思い出し「あっ!」と声を上げる。
 二人は突然アックスの発した声に驚き、彼を見る。

「ど、どうかしましたか?」
「これ、手紙! 渡しとけって言われたんだっけ。あっぶね!」

 鞄の中をあさり、取り出した封筒をテーブルに置く。サレリアスはその封筒を手に取ると、アザレアに渡す。彼女は受け取ると、宛て名を見る。 しかし、書いていない。不審な目でアックスに視線を向ける。

「これは……どちら様が…?」
「ユアだよ。ユア・ライムス」






 

 
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