陰陽のディーオ

□2章 アックスお使いに行く
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「で、で、でけ――――!ここ、あんたの家なのかぁ―――!」

 その反応に、アザレアはクスクスと笑う。
 確かに姫さまやらアザレア姫やら呼ばれ、この建物を見たら、貴族か王族と思う。しかし、アックスはというと、あまりの門の大きさにそんな事を考えている余裕がなかった。口を開け、ポカンとしていた。
 すると、門が開き、中から人が慌てたように走ってこちらに向かって来た。アックス達の前で立ち止まる。どうやら、男のようだ。白髪に髭がはえており、老いているのが分かる。その老人は、肩で息をし、アザレアに目を向けると、安心したような怒っているような表情をする。

「アザレア姫! いないと思いましたら、やはり外に行かれてたのですね」
「じい、そんなに慌てなくても……」
「慌てますよ! もし、アザレア姫に何かあったら、じいは―――!」
「いつもの事でしょう?」

 アザレアは目の前で泣く老人に、溜息と零す。いつもの事なんだ、とアックスは思うが、口には出さなかった。泣いている老人にビビりながら、アザレアに話しかける。

「あのさ、アザレア……」
「――ん? アザレア姫、この方は?」

 鋭い眼差しで見られ、アックスはその視線に固まる。威圧感を感じた。すると、アザレアは彼の前に立つ。

「アークフォルドの方よ。魔法薬を届けに来てくれたの。今日、違う人が来ると言いましたでしょう?」
「そうですか……しかし―――」
「彼が呼び捨てなのは、私が許可したからです。もし、それに怒るようなら、私を叱りなさい。分かりましたか、サレリアス?」

アザレアは言葉を遮るように、一気にそう言うと、アックスを見る。

「あ。呼び捨て、ダメだったか……」
「いいんです。気にしないで下さい。こうと言っておかないと、じいは何をするか分からないので」
「うん、ありがとう。確かに、お姫さまに対して知らない人とはいえ、いきなり呼び捨てはいけなかったよね」
「本当に気にしないで下さい……まぁ、ある一人は……いいのですがね」

 アザレアの最後の言葉に、アックスは疑問を持ったが、聞かない事にした。コホンとサレリアスは咳払いをすると、申し訳なさそうな顔をした。

「すいませんでした。アザレア姫がそう言うのでしたら……はい。改めまして、アックスさん、ようこそ。私はここの執事であり、尚且つ、アザレア姫の世話係をしています、サレリアスと申します」

 深々とお辞儀され、アックスもぎこちなく頭を下げた。

「えっと、よろしくです。サレリアス、さん」
「はい、よろしくお願いします。では、早速、中にでも。美味しいお茶とお菓子を用意します」
「お、お菓子ッ!」

 子供みたいに目をキラキラさせているアックスに、二人は顔を見合わせると、微笑む。三人は門をくぐり、中へと入っていった。



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