陰陽のディーオ

□2章 アックスお使いに行く
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 無事、転移装置でルーティアヌへとついたアックス。紙を片手に、歩いていた。初めて来た所なので、辺りをキョロキョロする。紙に書いてある住所と、簡潔に書かれた地図を頼りに進む。途中で、ここに住む人に道を聞く。その住所を聞くと、怪しいという目つきになる住人に、愛想笑いをして、今にいたる。

「んー。もう少しかなー」

 しかし、何故、あんなに怪しまれなくてはいけないのか分からずにいた。確かに、初めて来る所だし、キョロキョロしてたが、いくら何でもおかしい。極めつけは、この住所に行きたいと聞いた時の反応。今にも襲いかけられそうな雰囲気。
 一体、このアザレアという人は、どんな人なのだろうか。そう思った時、いきなり声を掛けられた。

「そこの貴方、アークフォルドの方?」
「んー?」

 アックスは振り返る。
 見覚えのある赤茶色の髪。しかし、そこにいたのは、男ではなく女の人。瞳は綺麗な桃色、肌は健康的な色。唇は形がよく、動きやすい服装をしている。

「どちらさん?」

 訝しげに聞くと、女性はクスクスと笑う。

「ふふ、そうですね。相手に名を聞く前にまずは自分から、でしたわ。初めまして、私はアザレアと申します」

 アザレアは、上着の裾を持ち、頭を下げた。アックスは、パチパチと瞬きするとするが、その名前に反応した。

「ア、ザレア…。あ、あんたか! この魔法薬を渡す人!」
「はい。その魔法薬を頂く者です。貴方でしたか、渡しに来た人は…」
「でも、何で分かったんだ?」
「いえ…キョロキョロとしている不審な人がいる、と聞きまして。こうして来たまでです。それに、今日はいつもの人ではないと伺ってました。……ここの人達にお聞きになりましたでしょう? それで分かりました」

 アックスはアザレアの言葉を聞き、ガックリと肩を下げた。確かに、キョロキョロしてたけど、と思う。それを見て、アザレアは苦笑いする。

「本当にすみません。少々、ここの方は心配性で……もしかして、ここは初めてですか?」
「うん。近くは通った事があるけど、中に入るのは初めてだよ」
「そうでしたか。確かに、初めてここに入り、渡す人の住所を探すとなると、そうなってしまいますわね……そうです!」

 アザレアは手をポンっと叩くと、アックスを見る。アックスは首を傾げた。

「こうして、お会いできましたし……早速、私の家に行きませんか? 魔法薬の確認をしないといけませんし。後、お詫びにお菓子でも御馳走しますわ」
「お菓子! そうだねぇ、じゃあ、お言葉に甘えて」
「あ! そういえば、お名前伺っていませんでしたね」
「忘れてた! 僕はアックス! よろしく!」
「アックスさんですか。よろしくお願いします」

 アザレアに手を引かれ、アックスは彼女の後ろをついて行く。行く先々でアザレアは声を掛けられていた。リンゴなどの果実を貰ったりしていた。アザレア様やら呼ばれていたが、アックスは特にそんな事は気にしていなかった。いや、している暇がなかった。
 先程、怪しい目付きをされた人達が謝ってきて、その相手で精一杯だった。

「アックスさん。リンゴ、食べますか? ここのリンゴ、美味しいですよ」
「うん。もらうー!」

 アックスはアザレアの手からリンゴを取り、服で軽く拭くと、一口食べる。口の中で広がる甘み。

「うめー!」
「それは良かったです」
「……それより、まだつかねぇーの?」
「もうすぐですよ。ほら、ここです」

 アザレアは大きな門の前に立ち止まり、アックスを見る。彼は、目を丸くして門を見ていた。



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