陰陽のディーオ

□2章 アックスお使いに行く
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二章 アックスお使いに行く


 新暦1422年、ディル

「おっ、アックス。いいところに」

 廊下でそう声を掛けられ、アックスは立ち止まり、振り返る。寝ぐせのついた髪が、その動きに揺れる。声を掛けてきたのは、白衣姿の男性。

「テナンさんじゃん。なにー、どうしたのー?」

 まだ、声変わりしていない声と、呑気な口調を聞き、テナンはぐしゃぐしゃと髪をかく。

「……今、暇か?」
「うん。ヒマだよー」
「そうか。……なら、頼みたい事があるんだが」

 アックスは何だろうと首を傾げ、テナンを見る。彼は、右手に持っていた袋を、アックスの顔面に突きつけた。アックスは、目の前に見える黒い色をした袋を数秒見つめた後、テナンに視線を向ける。

「これが……?」
「これをある人に渡しに行ってくれ」
「……」
「ちなみに、この中身は魔法薬だ。引き受けてくれるなら、後で駄賃やるからな」
「本当ー!? ヒマだし、いいよー。行く行く」

 テナンから袋を奪い取る。テナンは、苦笑いをしながら、話を続ける。テナンは、白衣のポケットに手を突っ込み、紙を取り出した。

「渡す人は、この紙に書いてある」

アックスは、紙を受け取ると、書かれている文字に目を通す。何度か確認しながら見ると、紙をポケットに入れた。

「うん、分かった。この人に渡すんだね。で、この住所に届ける、だね。分かった。じゃあ、行ってくるよ」
「よろしく。……そうだ。あまり、迷惑かけるなよ?」
「ん? 分かってるよ! 迷惑かけない! というか、いつも迷惑かけてるみたいな感じ」
「みたい、じゃなくてそうなんだよ」
「なんだとー! テナンさんに迷惑かけてないぞ!」

 アックスは、両手を伸ばそうとするが、左手に袋を持っていたので、右手だけを伸ばす。その手をテナンに向けるが、テナンは左手で軽々と受け止める。

「他にはかけてるだろ。全く、子供だなぁ」
「子供じゃなぁい!」
「こっちから見たら、ここにいる奴らほとんどが子供だよ」

 俺より年下だからな、と呟くテナンにアックスは、そうだったな、と思う。全然という訳ではないが、あまり気にしてなかったようだ。彼は、右手を下ろす。

「じゃあ、行ってくる!」
「気を付けて行って来い。帰ってきたら、こっち来いよー。小遣いが待ってるからな」
「あいよ!」

 アックスは手を振ると、歩き出した。それを見つめるテナンは、彼とは反対の廊下を歩き、小声で呟く。

「大丈夫かな、本当に。他の奴にすれば良かったか? まぁ、あの人なら、大丈夫か。あのくらいなんて事ないか。あはは。さて、戻るか。あまり、あいつを待たせると、怒るからな」
 

 
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