陰陽のディーオ

□8章 食事の時間に
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アレス視点


「確認が取れた。そこは、『ディル』と呼ばれる世界らしい。」
「ディル・・・ですか。」

 師匠から聞かされたのは、聞いたことのない世界だった。

「あぁ。神と人間が共存する世界だ。」
「神と人が!?」

 らしくもなく、声を上げてしまった。しかし、神とか……ホントに、世界は多種多様だな。神なんて、うちの世界じゃ神界に赴かなきゃ会えないような存在だからな……。

「真次さんは、そこの神の一人と会い、話をつけたらしい。それから、その神の伴侶は人間であったらしく、人間の方にも事情を知るものをおいてくれるという約束をしてくれたらしい。」

 シンジさんか……朔弥の親族で、隠密隊の先輩らしいが……俺が入隊する以前にいた人物か。どんな人物だったか知らないが、社交性とか交渉力とかに長けた人だったんだな。
 それにしても……神と話を付けた、か。そうすると、オルガ殿は……神とつながりを持つ人物?

「師匠。その事ですが、すでに協力者と思われる人物と会見しています。アークフォルドの長、オルガという人物です。滞在の都合上、彼と会ったのですが、彼は我々の事を『知って』いました。」
「そうか。」
「ひとまず、言語の習得、協力者との接触、滞在場所の確保は完了しました。」

 この世界については、まだまだ知らないことが多すぎる……が、今できる最低限のことはやった。

「御苦労。……無事の帰還をお待ちしております、アレス様。」
「はい、師匠。」

 仕事中に様付けで呼ばれるのは好きじゃない。でも、今回の師匠のそれは、上司としてではなく、武術の師としての言葉だと感じた。

「……他に、話すべきことは。」
「あ、はい。魔界の事ですが、オルガ殿以外にも話してよいものなのでしょうか。」

 オルガ殿はこちらの事もある程度知っている様子だったが、行動を共にすることが多くなるのはおそらくアックス達だ。オルガ殿は戦闘をしてもらうと言っていた。彼等にとっての常識如何によっては、こちらができることも限られてくる。

「……真次さんの残した報告書によれば、その世界には神も魔物も、魔法も存在する。我々がよく知る人間界よりは、その世界の人間達の感覚は魔界のものと近いと考えてよいと思う。」

 なるほど。だから、魔界はこの世界を保護対象としなかったのか。そして、神という強力なパイプを持つことで、警戒対象になることも避け、協力体制を築くことを選んだわけだ。

「ならば、異世界から来たということは話しても大丈夫ですかね。あと、軍人であるということも言います。そうでなければ、戦闘もしづらいですから。」
「そうだな、それでいいだろう。魔界での身分などは、話す必要はない。」
「はい。」

 身分なんて、他所の世界じゃ意味のないものだし、無駄ないざこざを生みかねない。何より……今の俺たちは、ただ、任務中に異世界で遭難した、一軍人にすぎないのだから。

「以上か?」
「はい。」
「それでは、こちらからはあと二点。」
「なんでしょうか。」

 師匠からの報告を聞いた後、通信を切った。



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