陰陽のディーオ

□2章 アックスお使いに行く
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 ユアの名前を出した途端、部屋の空気が変わる。アザレアの表情が固まったように、動かない。

「お、おーい……アザレア…?」

 流石に動かなくなったアザレアが心配になったアックスは、彼女に声を掛ける。返事はない。なので、サレリアスを見ると、引きつった笑みを浮かべていた。

「あ、アックスさん……あの……今……」
「……えっ。だから、ユアからの手紙だと…」

 動揺しているサレリアスに、何故か自分まで動揺してしまう。ユアの名前を言っただけなのに、この空気。何でこうなったのだろう、そう思っていると、急にアザレアがにやりと見たことない笑みをした。

「……!?」
「全く、あの馬鹿……今更、手紙よこして……こっちは待ってたのに」

 地を這うような声に、アザレアが出しているとは思わなかった。アックスは、ユア何したんだ、と思っていた。

「ん、と……ユアと知り合いなんデスカ?」

 自然と敬語になってしまう。若干震えた声で問い掛ける。その声に気付いたのか、アザレアは慌てたようにアックスが知ってる笑みをする。


「……あ。ご、ごめんなさい! 私ったら! 本当に、ごめんなさい」
「い、いいよ……そ、それより、ユアが何かしたの?」
「されたといいますか……えっと、私とユアは幼馴染なんですよ」

 封筒の中身を取り出し、手紙の内容を目で追いながら、話す。

「ユアの出身は、実はここでして……よく、遊んでました」
「は、へっ、幼馴染? 遊んだ?」
「はい。よく、こき使ってあげました」
「は、ははは」

 アックスは顔を真っ青にしたユアの表情が脳裏に浮かぶ。その間に、アザレアはサレリアスに紙と封筒、そしてペンを持ってくるように頼んでいた。

「で、突然、私の前からいなくなりましたの。下僕のくせにいなくなるなんて」
「……」
「ずっと、待っていてようやく手紙。普通、もう少し早く、寄越しますわよね!」
「……ユアがいなくなったのっていつくらいなの?」
「十三歳の時ですわ。十年前ですね」

 そういえば、ユアがアークフォルドに来たのってそのくらいじゃなかったっけ、と記憶を探る。確か、その時に何かあって性格が変わったとか。親に追い出されたとか、そんな感じじゃなかったっけ、と。本人ではないが、シャンクスからの情報なので、当てに出来る。
 でも、ナンパ好きのユアがここに来ないはず、ないと思うが。でも、ここに来たくない理由は分かる気がした。

「僕から、アザレアが会いたがってるから来いって言っとこうか?」
「本当ですか!? という事は、ユアはアークフォルドにいるんですね」
「あ、うん」

 余計な事言ってしまったような気がしたが、自分に任せたユアが悪い、と心の中で言う。





 
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