■モンスターファーム物語
□第三話 とても愉快なご近所付き合い
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さて、待望のモンスターも手に入れ、本格的にファームの運営を始めるウィンだったが…
「めんどくせぇなぁ…別にあいさつ回りなんてしなくてもいいと思うんだけど…」
「面倒なのはわかりますけど…これからお隣同士、色々とお世話になることもあるでしょうし…」
ファームの真ん中で、何やらゴネているウィンとそれをなだめるフィー。
引っ越して来たらすぐ、ご近所にあいさつに行くのは常識なのだが、常識の枠など全く当てはまらないのがこのウィンの性格。
もうファームでの生活を始めて一週間ほどになるが、まだご近所にあいさつにも行ってない。
これにはフィーも少し呆れ気味だ。
と、二人があれやこれやと話していると…
「おんどりゃー!めんどりゃー!わっしょーいっ!ほれほれーい!」
どこからともなく、なにやらものすごい声が聞こえてきた。
おまけに…なにか重い物が転がるような音と共に、地響きまで伝わってくる。
「ああ…また始まった…」
ウィンが勘弁してくれよ…と、ため息混じりに首を振る。
実はこの威勢の良い声は、ウィン達のファームの左隣にある、「怒須古威(どすこい)ファーム」から聞こえてくるもので、半ば一種の騒音公害になっていた。ちなみにファーム主であるブリーダーは「ゴンザ」という名前で、かなりイカつくてゴツいオジサンだ。
角刈りで、いつも白い柔道着を着ていて、ギラギラした目でモンスター達に指示を出しているのを、ウィンもチラッと見たことがあった。
「オラー!気合いだっ!気合いだっ!気合いだぁぁぁぁっ!てぇぇぇい!ハッスルハッスル〜っ!!」
隣からは延々と、ゴンザの熱いかけ声と、何か重い物を引きずるような音が聞こえてきている。
「あのオッサン…今日も一段と気合いが入ってるなぁ…」
「ええ…確かに…」
熱気ムンムンな隣のファームの方を、少し引き気味な目で見つめる二人であった。