■きつねの短編小説集
□†こぎつねのシロ†
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と、山のきつねの一匹が、隣の山へとつづく道にシロのものらしい足跡を見つけました。
それを見たとたん、シロのお母さんは泣きくずれてしまいました。隣の山は、恐ろしいクマやオオカミだらけの危険な山だからです。
お母さんは隣の山へとつづく道へ走りだしましたが、すぐに仲間のきつねに止められてしまいました。
「隣の山へ入ってしまったものは、絶対に助からない。残念だけど、シロはもう諦めよう…」
仲間のきつねがそういったとき、山の方からオオカミの遠吠えが聞こえてきました。
お母さんはへなへなとその場に座りこんでしまいました。
それを木の影からコッソリみていたいじめっこたち。
自分たちはとんでもないことをしてしまった…と、すっかり落ち込んでいました。
いじめっこたちの中の一匹が言いました。
「おれたち、とんでもないことをしちゃったな」
それに仲間の一匹がこたえます。
「まさかこんなことになるなんて…シロにあんなこといわなきゃよかった…」
もう一匹が言います。
「いまからでもまだ間に合う。…シロを助けにいこう」
その言葉に、他の仲間たちはいっせいに首を横にふりました。
みんな心の中ではそうしなければいけないとは思っていても、言葉と行動に出すのは怖かったからです。
助けにいこうといったこぎつねは、みんなを見回してこう言います。
「じゃあ、今日のよる、おれといっしょにシロを助けに行こうと思うやつは、おとなたちが眠ったあとにこの木の前にあつまってくれ」
この言葉をきいて、いじめっこのこぎつねたちは、みんなうつむいたまま、家へと帰って行きました。